暗灰色の狂狼-5
「ルーディ殿っ!!私はラヴィではございませんっ!」
悲鳴とともに横っ面を張り飛ばされ、はっと目が覚める。
「わっ!?」
いつのまにかルーディは、自宅のベッドに寝かされていた。
白銀の雪と思っていたのはサーフィの髪で、どうやら寝惚けて、彼女に抱きついてしまったようだった。
「い、いや、その……寝惚けちゃって……ごめん……」
非難がましい目で思い切り睨まれ、もごもご言い訳する。
「……っていうか、ラヴィは!?」
「出血こそ多かったですが、内臓の損傷は心配ありません。二階で安静にして頂いて……」
そこまで聞いたところで、ルーディはもうたまらずにベッドから飛び出した。
「ルーディ殿!」
サーフィの声を後に聞きながら、階段をかけあがる。
体中の傷は、すでに大部分が塞がりつつある。
上半身に巻かれていた包帯が解けかかり、階段を二段飛ばしで昇りながら、邪魔なそれをむしりとった。
二階部屋のドアを勢いよくあけると、ベッドに横たわっているラヴィと、付き添っているバーグレイ商会の医師、それにアイリーンがいっせいにふりむいた。
「まったく、なんて格好だい」
身につけているのはズボンと、まだぶら下がっている包帯というルーディの格好に、アイリーンと医師が笑い転げる。
ラヴィもクスクス笑っていた。
前髪が短くなったおかげで、ラヴィの笑顔があますところ無く見える。
「―――やっぱり……ラヴィは、世界一かわいい」
ポカンとそれに見とれ、思わず本音を漏らすと、アイリーンに頭をはたかれた。