変わり者の錬金術師(注意、性描写あり)-5
「…中和剤?」
「つまり、媚薬の効果を消す薬が無くなっちゃったんだ」
「嘘……じゃ、どうなるの!?ん…っ!」
「夜明けくらいまで我慢すれば、効果は自然に消えるけど……」
「……」
ルーディの言葉に、絶句した。
こうしている今も、むず痒いような耐えがたい疼きが、どんどん強くなる。
夜明けまでこのままだなんて……!
しかし、薬が割れた原因は、どう考えてもラヴィだ。文句を言える筋合いではない。
「ぅ……んぅ……薬の効果を見たかったんでしょぅ?なら……ぁ、がまんするっ……ん……」
ヤケになって強がりを口にする。
弱りきった顔で、ルーディが頭をかいた。
「まぁ、効果は見たかったけど……」
ふらついて言う事を聞かない身体は、しっかり自分で立てない。
これ以上なにかをひっくり返すのも怖くて、不本意ながらルーディにしがみついたままになる。
「ん……ぁ……ぁ……」
少しでも熱に耐えようと硬く瞑った目尻から、生理的な涙が零れた。
頬を伝うそれを指先で拭われ、ビクリと身体が震える。
「ラヴィ、怖がらないで気持ちを楽にして……これは本来、相手を楽しませる薬なんだから」
優しい声が耳元をくすぐり、軽々と抱き上げられてベットに降ろされた。
「や……!?力づく……しないって……あ……」
「うん。薬を早く消すために触るけど、犯したりしないから、安心して」
ルーディが苦笑し、そっと指先でラヴィの頬を撫でる。
「ひ、んっ!?」
首筋から鎖骨までなぞられ、身体が勝手にビクビク跳ねる。
恐怖とわけのわからない感覚が入り混じり、涙が止らない。
他に娯楽の少ない田舎では、性的な話題には事欠かず、周りの子ども達も興味津々だったから、早いうちから知識だけはある。
初体験を自慢しあう女の子たちを横目で見ながら、表立っては興味のないふりをし続けていた。
顔の傷が引け目になり、男の子に対して積極的になれなかったし、ラヴィを育ててくれた老婦人は、むやみに身体を許さないよう厳しく禁じていた。
それでも、話しに聞いていただけだった頃は、性行為に少々憧れと夢を抱いていた。
いつか一生を添い遂げる相手が出来たら、その人に抱かれたいと密かに思っていた。
だが、実際に一度見た他人の行為は、凄まじく酷い陵辱だった。
歪んだ暴力と薄汚い欲望にまみれた、汚れきったケダモノの所業だった。
骨の髄まで恐怖を叩き込んだあの光景が、脳裏に蘇る。
「ぁ…………………………」
恐怖に声も出ない。
熱に悶えて震えながらも、身体はガチガチに強張って、呼吸すら上手くできず、酸欠の魚のように喘いだ。
それを見たルーディが、一度指を離した。
「ラヴィ……約束する……酷い目にはあわせない」
頬の爪痕に、軽く触れるだけのキスをされた。
ぞくり、と何かが身体の奥から競りあがってきた。
琥珀の瞳から目が放せない。
動悸は先ほど以上に跳ね上がっているのに、恐怖の強張りが溶けていく。
「安心してくれ……」
宥めるように囁かれた言葉は、まるで魔法だった。
ラヴィの恐怖も羞恥も、グズグズに解かして消し去ってしまう。
もう一度ゆっくり、指が首筋にふれた。
「ふ……ぁんっ!」
零れた声は、今度はひきつった悲鳴ではなく、甘い吐息混じりのものに変わっていた。
安心したように、ルーディがほっとため息をつく。
わき腹をなで、服の上からでもはっきり尖っているのが解る乳首を軽くつつき、ゆっくりゆっくりと、慎重な愛撫が施される。
「や、あ、あ、あ、あ……ルー……でぃっ……ぁ!」
きもちいい。きもちいい!
壊れ物でも扱うような、もどかしい丁寧な刺激に、狂いそうになる。
くちゅ……
いつのまにか足の間に差し込まれた指が、濡れた音をたてて粘膜をすりあげた。
「あぁぁっ!!」
下腹部から競りあがる甘い快楽が、恐怖を誤魔化して忘れさせようと攻めたてる。
指は差し込まれることもなく、淫らな水音を立てながら媚肉をなで上げるだけで、ひたすらラヴィに快楽を与え続ける。
「や、やぁっ……ん、んん……」
今まで、自慰をした事もなかった。
昔、一度だけ夜中にこっそり自分でそこに触ったとき、なんだか悪い事をしているような罪悪感に苛まされ、すぐやめた。
それきり身体を洗うとき以外、決して触れなかった。
「あ、あ、や、はぁっ……はぁ、あ、あ…………!!」
痛い事をされてるわけでなく、ただ触れられているだけなのに、経験した事のない感覚に、追い詰められる。
触れられている場所から伝わって、もっと身体の深い部分に、快楽がどんどん溜まっていく。
ぬめりをまとった指が、つと前の部分へ移動した。
ただでさえ敏感な肉芽に触れられ、ビリッと全身に衝撃が走る。
「あ!?く、う、ぅぅんっ!!!!」
甲高い悲鳴と共に、弓なりに背が大きくのけぞった。どっと汗が吹き出て、心臓がドクドクと壊れそうなほど脈打つ。
ちらちら小耳に挟んでいた『イク』というのは、ひょっとしてこれなのだろうか……と、余韻に痺れる脳内でぼんやり考える。
「あ……ぁふ……」
開放感にほっとしたのもつかの間だった。
先ほど以上の飢餓感に苦しめられる。あの感覚をもっと味わいたいと、全身の熱が叫ぶ。
「あと、もう何回かすれば、治まるはずだから……」
我慢してくれと、小さく囁かれる声にも煽られる。
わけがわからないグチャグチャの頭で、思わずルーディの首に両手を伸ばして、引き寄せるように抱きついた。
「――ル……ディ?」
密着した腰に、固い熱の感触があたった。