47 冷酷な熱-3
その日の夜、ハルが家に来た。
「あれ、誰か来たの?」
玄関からスタスタと居間に入ってきた。いつもは散らかっている私の部屋が、綺麗に片付いているのに気付いたらしい。
「うん」
私が俯きがちに返事をしたので、何かに気づいたらしかった。
「例の、身体だけの人?」
ベンチに座る私の隣に、腰掛ける。
「うん、ごめん。前もって言っておくべきだった」
ハルは項垂れて「んだよ、くそっ」と呟いた。
「ごめん」
「謝るなよ、何かしたのかよ」
「何もしてない」
「じゃぁ謝るなよ。前もって言ったって同じだよ。何でそんな男を家に上げるんだよ。」
「ごめん」
謝る事しか出来なかった。沈黙が流れる。何か言い訳を探した。ハルが顔を上げるのが雰囲気で伝わった。
「何しに来たんだよ」
「近況報告?」
「メールでやれよ」
「はい」
「あ、メールもするな」
「はい」
俯きながら、何とか言葉を紡ごうとする。
「あのね、近況報告して、今後一切会わないって約束した。私は、今の彼と幸せにやっていくからって、約束したの――」
暫しの沈黙があり、そして張りつめていた糸がぷちんと切れる音がした。ハルの手が、私の頭にポン、と乗った。そして頭を撫でた。
「初めから、そう言ってよ。心配になるじゃん。今後は俺以外の男を、許可なく部屋に呼ばないんだよ」
「イエッサー」
見つめ合って、暫くして、2人吹き出した。そしてキスをした。