38 顧(かえり)みる -1
フェスから帰ってすぐ、ハルさんと飲みに行った。ハルさんは気を遣って、洒落たレストランを予約してくれたが、「酒が高い」と言って結局2次会はオヤジ達が集まるような大衆酒場で、枝豆を突きながら酒を飲み、大いに喋った。
誰かとこんな風に言いたい事を言い合って騒いで笑って食べて飲んだのって、凄く久しぶりに感じた。太一君と花火をして以来?
「フェスの時、ミキちゃん、髪の毛ぐっちゃぐちゃだったよね」
女相手にこんな事を平気でヌカす人なのだ、ハルさんは。とても話しやすく、同じ年なので気を遣う事もない。
しこたま呑んで駅で別れた後、ハルさんから携帯にメールが来た。
『今日はありがとう。女の子と話してこんなに楽しかったのは久しぶりだったよ。出会いがもっと早ければ、俺が結婚してくれって言ったのにっ』
本当は笑ってしまう所なのだろうが、真剣に読んでしまう自分がいた。本当、こんな人が結婚相手だったら、毎日が楽しいんだろうな。タイミングの神様につくづく見放されている人生だ、そう思った。