25 香草-2
帰宅すると、将太はソファで膝にノートPCを乗せて座っていた。
「ただいま」
「お帰り」
「何やってんの?」
「オークション」
またか、と思いつつ、彼のやる事に干渉したくないので、私は自分のマッキントッシュを立ち上げて、拙い文章でブログの更新作業に入った。映画の感想でも載せておくか。
一緒に暮らすようになっても、お互いが勝手な作業をしている事が多く、タキの言う通り「何で結婚したんだろう」と思う事は多い。結婚する前の様に、何とかして会おうという熱意が無くなるのは当然で(だって一緒に住んでるし)、寝る時間もお互いずれるので、セックスの回数も激減した。そこに不満はない。が、結婚って、こういう物なの?と疑問には思うのだった。
自分の父と母を思い浮かべる。父は泊まり勤務の仕事で、家にいる時は母と喋るでもなく、枝豆を食べながらナイター中継を見ていたり、釣り具の手入れをしたりしていた。母は母で、録り貯めしたサスペンスドラマを見たり、買い物に出たりしていた。結局、2人が会話している場面って、食事時ぐらいだ。
子供を介さない限り、夫婦ってそんなものなんだろうか。新婚って、こんなに退屈なもの?