15 綻(ほころ)び-2
突然、まぁ携帯の着信は大抵突然なのだが、お尻のポケットに入れてあった携帯電話が振動した。固定電話からの着信だ。誰だろう。
「はい?」
『もしもし、俺だけど』
その声はユウだった。携帯を握る右手にじわっと汗が滲むのがはっきりとわかった。
「なっ、どうしたの、どっから電話してんの?」
『家からだよ。携帯からじゃ、出てくれないだろうと思って。勉強してんの?』
おいおいこのタイミングで何の用だよ、と突っ込みたかった。あぁ、何か答えなきゃ。答えなきゃ。座っていながら軽く眩暈がした。
「勉強、そうだよ、勉強してるんだよ、だから電話して――」
ケホケホ、「あ、ごめん」、とサトルさんが咳き込み、喋った。
あーっ、まずいっ。この状況はやばいっ。国家試験が終わるまで会う事を拒否しておいて、どこぞの男と一緒にいるなんて事が知られたら、と言うか知られた?いや、今の声は兄貴の声、いや、うちの兄貴は家出してるんだった。じゃぁお父さん――。
「電話してくるな、って?ふーん、で、誰といるの?今咳をした人は?」
さぁミキ、頭をフル回転させるんだ、ユウに納得のいく答えをさぁ、ぶつけるんだっ。
「――家庭教師のお兄さん、でーす。なんつって」
「――切るね」
プツっと音がして、続いてプーップーッという音が鳴った。暫くその音を聞いていて、
サトルさんが声を掛けている事に気づかなかった。