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キャッチ・アンド・リリース
【大人 恋愛小説】

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13 白光-2

 「前にうちに来た時の事、覚えてる?」
 「うん、覚えてる。勿論ですとも」
 サトルさんの右手に、恐る恐る自分の震える右手を重ねると、左手で重ね返してきた。
 「俺の事、想ってくれてたんだね。嬉しかったよ」
 確かにあの日から暫く、私の心はサトルさんに奪われていた。だけど、『遠くの親戚より、近くの他人』と言うではないか。私は自分の身近で自分を思ってくれるユウを選んた。

 それに、サトルさんの私への「想い」は、その場限りの物であったと、私は認識している。
 「でもサトルさんの『好き』は持続しないんでしょ?シャボン玉みたいに消えるの?」
 「俺はそういう男なのだよ。責任の取り方が分からない。」
 抱きしめる腕に力が入る。ふわふわに話をはぐらかされているように思えるのだが、責め立てる言葉が出てこない。背中を覆うサトルさんの身体が暖かい。

 耳にキスをされた。身体に電気が走るような痺れを感じた。
 そのまま押し倒され、仰向けになった。頬に、額に、キスを落とされた。サトルさんは電気から垂れ下がる紐を2度引き、闇を作った。
 唇を重ねる。歯列の隙間からサトルさんの唇が入り込み、私の舌と絡み合う。それだけでもとろけてしまいそうな快感に、吐息が漏れてしまう。

 冷静な自分が「キスに慣れてる」と感じた。きっとたくさんの女性とのキスを経験してきているんだろう。ユウの幼げなキスとは違う、気遣いの様な物が感じられた。

 片手で私の頬を撫でながら、もう片手で私の胸をまさぐり、敏感な部分に触れた。身体が跳ねる。薄闇の中浮き上がったサトルさんの目と目が合う。あぁ、きっと今、私の顔は真っ赤だ。
 優しく服を脱がせ、自分の服もさっと脱ぎ取ったサトルさんは、再び私の胸を刺激し始めた。私の身体が跳ねるのを楽しんでいるのか、執拗につまみ、弾く。そしてその指は唇に、舌に変わった。

 身体を撫でながら下半身に入り込んできた指先が、私の突起に触れる。
 「あっ――」
 思わず声が出てしまう。
 「もっと、声聞かせてよ」
 耳元で囁くサトルさんの声にすら反応し、身体がむず痒くなる様な感覚が全身を走る。
 「はっ――あぁ、恥ずかしぃ――」
 指で突起を左右に揺らされ、快感が脳内を占拠する。
 すっかり濡れてしまった部分に指が入り込み、刺激される。卑猥な音が聞こえる。
 「痛ぇ?」
 被りを振った。痛いどころか――。

 状況を俯瞰しているもう一人の自分が、「ここはアパートだ。声を出すな」と言う。
 快感で溢れてしまいそうな声を押し殺すが、殺し切れずに漏れた。
 「はぁっ――あぁっ――」
 すっかり硬くなったサトルさん自身を手で握り、ゆっくりと扱く。びくっと身体を震わせ、先端から粘性のある液体が漏れる。私は起き上がり、今度はサトルさんを押し倒した。形勢逆転。

 液体の出所をキャンディを舐めるように刺激すると、サトルさんも声を漏らした。そのまま口に含み、扱くと、口の中には液体の味が滲みてくる。液体と唾液が交じり合った卑猥な音を立てながら、扱き続けた。
 「ちょっ――もう我慢できない」
 そばにあったコンドームを器用に装着し(いつ準備したんだ、と冷静な私は考える)、私の脚を広げて、入り込んできた。暖かいものが出入りする。

 この瞬間、サトルさんは私を愛しく思ってくれているのだろうか。友達以上の感情を抱いてくれているのだろうか。息を切らせながら出し入れするサトルさんを抱き寄せ、キスをした。どうか、今だけでも、私を愛してくれていますように。

 果てる瞬間、サトルさんは足元にあったビールの缶を倒してしまい、残っていたビールが床を濡らした。
「あっちもこっちも濡れちゃったな」
 コンドームを抜きながらそんな冗談を言った。
 私はショーツだけを身に着け、闇にすっかり慣れた目でビールがこぼれた所を、傍にあったタオル(ビールの缶を拭ってタオルだ)で拭き取った。畳にシミが出来ているが、そう広範囲ではない。

 壁掛け時計を見ると、深夜1時をまわっていた。
 サトルさんはボクサーパンツを履きクローゼットへ行き「これ着てよ」と私にTシャツを貸してくれた。部屋着なのだろうか、くたっとした感触が心地よく「ありがとう」と言ってそれを着た。サトルさんの匂いがした。
 サトルさんが敷いてくれた布団に入ると、すぐに抱きしめられた。

 『すっごく好きかどうか、相手が信用できる相手かどうか、見極めておいで。』
 レイちゃんの言葉が頭をよぎった。

 身体の関係を持ったからこそ、「好き」に拍車が掛かった。サトルさんを凄く好きになった。
 優しい気遣いのある愛撫は、サトルさんが歴戦の勇である事を感じさせるものの、誰にだって過去はあるんだ。私なんて過去じゃく、これは正真正銘の「浮気」である訳だし。
 しかし、私がいくら相手を好いていても、相手が自分を好いているとは限らないという所が、恋愛の面倒くさい部分だ。
 サトルさんは私と遂に最後までヤった訳だけど、以前のサトルさんの言葉を借りれば、今この瞬間は私を愛おしいと思ってくれているのかもしれない。だけど明日はどうだろう。サトルさんの「好き」は持続しないのだ。
 『俺はそういう男』と言ったサトルさんの真意が分からない。それが分かったところで、酷く傷つくような気がして、問いただす勇気が出ない。

 世に言う「ピロートーク」をしている最中、やや沈黙があり、そのままサトルさんは眠りについてしまった。
 サトルさんの胸に抱かれ、サトルさんの規則的な寝息を聞いている。さっきまで激しく降っていた雨は止んだのか、雨音がやんでいた。


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