ご褒美-1
「ねぇ、ユウちゃん。もう、寝ちゃった?」
「…ん?」
「そっち行っていい?」
「…え…あぁ…」
部屋にはセミダブルとシングルのベッドが1台ずつ、枕元のキャビネットボードを挟ん
で置いてある。メインの照明は消えていたので薄暗かったが、アイは手探りで、隣のセミ
ダブルのベッドへ足先から滑り込み、ユウの背中に胸を押し付けしがみついた。
「ユウちゃん、今日はダメ?」
ユウの二の腕を右の掌で撫でながら、アイは甘い声でねだり、背中に頬擦りをした。
「ねぇ、いいでしょ? お風呂も入ったんだしさぁ」
「…ん…もう、眠いよ…」
「少しくらいならいいでしょ? 頑張ってよぉ、ね? ね?」
胸の膨らみをさらに強く押し当て、アイは、肩を掴んでユウの身体を揺さぶった。
「…ごめん…寝かせて…」
アイの手を振り払ってベッドの向こう側へ逃げると、ユウは、掛け布を被り直し背中を
丸めて縮こまった。
「もぉ! 終わってからゆっくり寝ればいいでしょ、明日お休みなんだからぁ!!」
思わぬ抵抗にあってベッドの上に半身を起こしたアイが、大きな声でユウを詰った。
「…疲れてんだよぉ、中途半端にしたら怒るだろ、アイ…」
「そりゃぁ怒るわよ。当たり前でしょう!」
「…だからさ、おやすみ…」
被った掛け布の上からどやしつけるアイから身体を背けて、ユウは、手足をさらに縮こ
まらせ丸まってしまった。