ねこ の おやこ-1
ぼくたちは知っている。
この街のことなら、なんだって。
通りのむこうの家のおじさんは、ぼくたちがちょっとのぞいただけでもすぐ怒る。
こわいこわい、おこりんぼう。
すぐそこの道沿いにある魚屋さんは、いつだってぼくたちにおいしいものをくれる。
とってもとっても、やさしいおばさん。
ひなたぼっこにはどこの屋根が最高か。雨のふる日はどこにいけば濡れずにずむか。
近道だってたくさん知ってる。
塀を飛び越え、みぞの淵を走り抜け、屋根をつたって、
ぼくたちはいつだって行きたい場所にたどりつく。
毎日毎日、この街のどこかで起きるいろんなことをながめながら、
ママときょうだいたちとみんなそろって気楽に暮らす。
あのうるさい人間たちは、ぼくたちのことを「ねこ」と呼ぶ。