ねこ の おやこ-2
夕方、いつもの散歩道。
ママが先頭をすいすいと走り、きょうだいたちが後をついていく。
もちろんぼくも。
ぼくは一番ちびだから、よくみぞに落っこちたり、道に迷って置いていかれたりするけれど、
最後はいっつもママがぼくを見つけて、口にくわえて走ってくれる。
赤い屋根のちいさなおうち。ここがぼくは大好きだ。
この家にはかわいい人間の女の子がすんでいる。
「まりちゃん」って呼ばれているのをよく聞くから、それがあの子の名前かな。
まりちゃんは、ぼくたちが塀のすきまから顔をのぞかせると、
とってもうれしそうに目をきらきらさせて手を振ってくれる。
おおきな声もださないし、ときどきはおいしいものをくれることもある。
ママはあんまり人間に近づいてはいけませんって言うけれど。
すごくこわかったけど、あんまりまりちゃんが呼ぶものだから、
ぼくはまりちゃんのそばまで行ってみた。
まりちゃんは、かわいいね、かわいいねってぼくの頭をなでてくれた。
ぼくはのどを鳴らしてうれしがってみせる。
まりちゃんはとってもよろこんだ。
そうして、ぼくに言ったんだ。
「おともだちに、なってね」
ぼくはまりちゃんが大好きだ。