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恋なんて知らない
【初恋 恋愛小説】

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恋しくてたまらない-8

***


「もういい加減泣き止んでよ、お姉ちゃん。」

「私のだったのに、私の方が前から好きだったのに。」

恋のライバルにささやかな意地悪をして泣き続ける姉に、ハンカチを渡す。

「でもさぁ、しつこいお姉ちゃんの割にあっさり引き下がったよね。」

私が言うと、お姉ちゃんはキッと私を睨んだ。

「だって、高橋さんが私を可哀想な目で見て『ごめん』って言うのよ?
あんな目で見られたくない!」

私が貸したハンカチをくしゃくしゃに握り締めて激しく首を振る。

「心も私が持ってないといや!
他の人を好きな高橋さんなんていらない。
だから、私の方から捨ててやったんだもん!」

この年齢でこんなに泣きじゃくる人も見ないなぁ、なんて思いながら、姉の頭をぽんぽんと叩いた。

「お姉ちゃん、いい加減幸せになりなよ。」

「由香は、恋に悩んでないから分からないのよ。」

「私にだって悩みあるよ、好きな人が自分の姉のことが好きとか。」

私が大嫌いな従兄弟の顔を思い浮かべながら独り言のようにつぶやくと、お姉ちゃんはさっきまで泣いていたのが嘘のように目を輝かせる。

「えーっ、誰だれ?かっこいい?」

「おねーちゃん…」

お姉ちゃんはよく泣くし傷つきやすいけど、結構強い。
…だから高橋さん、あんまり気にしないでね。

私は、青い空に向かって大きなため息をついた。




END☆


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