White Chocolate TIme-9
ケンジのケータイが鳴った。
「わいや。二人とも起きたか?」
「ああ。起きてる。」
「下に降りてもええか?」
「ごめんな、気を遣わせちゃって。大丈夫。降りてこいよ。」
「わかった。ほな。」
すぐにケネスは階下に降りてきた。ケンジとマユミは並んで階段の下に立ち、広い窓から外を眺めていた。「おはようさん。」
「おはよう。ケニー。」マユミが言った。
「ゆっくり眠れたか?」
「ああ。ぐっすり眠れたよ。」
「ほんまに?」
「何だよ。」
「ケンジ、お前マーユを一晩中眠らせんかったんとちゃうやろな。」
「一晩中はさすがに・・・・。」
「ちょっとこっち来てくれへんか、ケンジ。」ケネスはケンジの手をとり、入り口のドアのところまで引っ張っていった。「な、何だよ。」
ケネスは小声で言った。「昨夜わいな、お前らの営み、盗み見してもうた。」
「えっ?!」
「ごめん。」ケネスは両手を合わせてケンジを拝んだ。「悪気はなかってんで。そやけど、身体が勝手に、なんちゅうか、こう・・・。」
「そうか・・・。こっちこそごめんな。なりふり構わずやってたから、お前を刺激しちゃったんだろ?」
「なりふり構わず・・・まさにそんな感じやったな・・・・。そやけど、わい、くっつき合ったお前ら見るの、二回目やしな。」
「そうか、夏の無人島が最初だったな。」
そこにマユミがやって来た。「ねえねえ、何こそこそ話してるの?」
「え?い、いや、何でもない。」
「隠し事なし。気になるじゃん。」
ケネスはケンジをちらりと見た。「いいよ。」ケンジが言った。
「あ、あのな、マーユ、気い悪くせんといてな。あのな、わいな、ふ、二人の、その、なんや、あ、あれを・・・」
「見てくれてたんでしょ?」マユミが笑顔で言った。
「えっ?!」ケンジとケネスが同時に叫んだ。
「知ってたよ。あたし。ケニーが上から見てたの。」
「ほ、ほんまか?」
「うん。うれしかったよ。誰かに見られながらケン兄と愛し合うのって、あたしちょっと憧れてたからね。夏に言わなかった?」
「ううむ・・・。」
「それに、見てる前でやってもらいたい、って言ったのケニーじゃん。」
「そ、そうやったかいな・・・。」
その時、ドアの向こうで声がした。
「朝ご飯持ってきたったでー。」シヅ子の声だった。ケネスはドアを開けた。
「おはようさん。二人ともええ朝、迎えられたか?」シヅ子は持ってきたトレイをケネスに預けながら笑顔でそう言った。
「そりゃもう、最高の朝やったみたいやで。」ケネスが言ってケンジにウィンクした。
「え?!も、もしかしてさっきのも見てたのか?お前。」ケンジが小声で言った。横からマユミがケンジに囁いた。「あたし、知ってたよ。」ケンジは真っ赤になった。
「ほな、コーヒー取りに来。」シヅ子が言った。
「わかった、わいが取りに行くわ。」ケネスがドアから出て母親のシヅ子といっしょに本宅に消えた。
トーストとスクランブルエッグ、それに生野菜が載ったトレイをテーブルに置いて、マユミとケンジは窓際に立った。
「まぶしいね。」
「そうだな。辺り一面銀色に輝いてる。」ケンジはマユミの肩にそっと手を乗せた。
「ケン兄。」
「何だ?」
「言い忘れてた。」
「何を?」
「お誕生日、おめでとう。」
ケンジは破顔一笑した。
「マユも。おめでとう。」
ケンジはマユミの肩に置いた手を彼女の脇に回して、抱き寄せた。
「コーヒー持ってきたでー。」ドアの外でケネスの声がした。「今、開ける。」ケンジはマユミから腕を離してドアに急いだ。そしてケネスから3つのカップが乗せられたトレイを受け取った。ケネスは中に入ってドアを閉めた。
「マーユ、朝日の中で輝いとるわ。」
ケンジも振り返ってマユミを見た。マユミは二人を見て微笑んでいた。
「ほんとだ。」
「きれいやな・・・・。」
背後からのきらめく、まぶしい光を浴びて、マユミの髪に天使のような黄金色の輪ができていた。
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