White Chocolate TIme-2
「じゃあ、これ、私とお父さんからの誕生日プレゼント。」母親が封筒に入った現金を二人にそれぞれ渡した。「いつものようにこれで好きなもの、買い合ってね。」
「わかった。よし、行こうか、マユ。」ケンジはマユミに笑顔を向けた。
「うん、ケン兄。」マユミも元気に言った。
母親が怪訝な顔で言った。「あんたたち、仲良過ぎじゃない?」
「何だよ、いいだろ、ケンカするより。」
「そりゃそうだけど・・・・。何だか手でもつないで歩きそうな勢い・・・・。」
「何か問題でも?」
「普通、高校生の兄妹って、もっとこう、表面上よそよそしくするもんじゃないの?」
「いいじゃない。兄妹いがみ合ったらきつい、っていつも言うの、ママじゃん。」マユミが言った。
「そりゃそうだけど・・・・。」
「ああ、それから、」ドアを開けかけたケンジが振り返って言った。「今日はケニーんちに泊まるから。」
「えっ?」
「マユミも俺も。」
「・・・まあ、ケニーくんのことだから心配ないとは思うけど、もしも、ってこともあるから・・・。」
「いいじゃない、ママ。」
「ケンジがいっしょだからいいか。ちゃんとマユミのこと見ててね。」
「わかってるって。」ケンジが胸張って応えた。「俺がマユの貞操を守る。」
「大げさよっ!」母親が言った。
「夕方出かけるから。」
「ちゃんと行儀良くするのよ。」
何も知らない母親は、二人を送り出して玄関のドアを閉めた。
冬枯れの街路樹の下を、ケンジはマユミと並んで歩いていた。「今日は隣の街まで行ってみるか、マユ。」
「どうして?」
「この近くだと、誰かに見られるかもしれないじゃないか。」
「見られたらまずいの?」
「お前と手もつなげないよ。」
「そっか、そうだね。」マユミはケンジの腕に自分の腕をからませた。
「こっ、こらっ!だからここじゃだめだって。」ケンジは赤面してマユミの腕をほどきながらなだめた。「にしても、」
「何?ケン兄。」
「お前、寒くないのか?そんな短いショートパンツ穿いて。」
「ちゃんとタイツ穿いてるから。それに、このコートすっごく暖かいんだよ。」マユミは丈の短い白いピーコートを羽織っていた。ケンジはマユミの下半身に視線を投げてぽつりと言った。「お前の脚・・・、きれいだ。」
「ケン兄のエッチ。」
電車に30分ほど揺られて二人が降りた駅は、顔見知りと会う可能性が少ないとケンジがふんだ街の中心にあった。
「さて、マユ、何がいい?」
「あたしね、この日がきたらケン兄にねだろうと思っていたモノがあるんだ。」マユミはケンジの手をとって言った。ケンジもマユミの温かい手を握り返した。
「へえ、何だ?それ。」
「おそろいのショーツ。」
「ええっ?!」
「しかも、Tバック。」
「てぃ、Tバック?!」ケンジはまた赤面した。「な、なんでそんな・・・・。」
「ペアでケン兄と同じ下着を穿いていたいもん。」
「そ、そんなの売ってるのかなあ・・・。」
二人はいくつかのデパートの下着売り場を訪ねた。「なかなかないもんだね。」
「なあ、マユ、違うのにしないか?」
「いやっ。あたし決めてたんだから。」
4軒目の売り場にそれはあった。
「これこれ、こういうのだよ。」マユミははしゃいだ。「メンズとレディスが同梱。どっちもTバック。しかも、」
ケンジはマユミの背後にこそこそ隠れるようにして言った。「しかも、何だよ。」
「メンズが白で、レディスが黒。もう理想的じゃん。」
「な、なんで理想的なんだよ。」
「だって、ケン兄あたしの白いショーツ穿くの好きでしょ?」
「こっ、こらっ!声が大きい。」
「あたしはケン兄の黒いTシャツが大好き。」
「な、なるほど・・・。」
「わかってくれた?」
「わ、わかったから、早くレジに・・・。お、俺、こっちで待ってていいかな?」
「だめ。」
「ええっ?」
「だって、これ、ケン兄のあたしへのプレゼントだよ。ケン兄が買ってくれるの。」
「そ、そんな・・・・。」
ケンジはマユミに促されてその箱をレジに持っていった。そしておどおどしながら箱をそっと差し出した。若い女性店員はケンジの顔を見てにこやかに言った。「プレゼントですか?」
「は、はい。」
「あちらの方への?」店員はケンジの背後に離れて立っているマユミに目を向けて言った。
「そ、そうです。」
それからその若い店員は事務的にキーをたたいて、ケンジからお金を受け取り、しかるべきおつりを渡すと、最後にまたにっと笑って言った。「どうもありがとうございました。またのご利用をお待ちしております。」