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真夜中の淫謀
【レイプ 官能小説】

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最終話 〜与えられた罰〜-5

「嘘……嘘よ、ねえ? この子がいるから、そんなふうに言ってるだけでしょ?」

 そうよ、エリナがいるから。エリナさえいなければ、一樹くんはわたしのことだけを見てくれる……

「何回も言わせるなよ! 俺は、高校の時からずっとエリナだけが好きだったんだ。その気持ちはずっと変わらない。みずき、はっきり言っておく。何年もしつこくつきまとわれて、ずっと迷惑だと思っていた。おまえのことなんか大嫌いだ!」

 斎藤はみずきを振り払い、エリナを正面から強く抱きしめた。みずきは雨に濡れた地面にぺたりと座りこみ、ふたりを見上げた。大きな満月を背にしたふたりは黒いシルエットにしか見えず、なにか手の込んだ影絵でも見ているようだった。

 耳鳴りがひどい。わんわんと巨大な蠅が飛び交うような音が鳴りやまない。さっき、斎藤は何と言ったのだろう。だ い き ら い。言葉が意味を為さない。ただその音の響きは、ひどくみずきを悲しい気持ちにさせた。

 ぼんやりとした気分のまま、なんとなく立ち上がる。斎藤はエリナを抱きしめたまま、みずきを睨みつけている。そんな目で見られたら、すごく苦しくなっちゃう。わたしの目の前で、そんな女を抱きしめたりしないで。

だいきらい。だいきらい。わたしはこんなに好きなのに、そんなことを言うの? そんな一樹くんなら、わたしの元に戻ってこない一樹くんなら。

「もう知らない! あんたなんて、大嫌い!」

 景色がスローモーションで動いた。みずきは反動をつけて目の前にあるふたりのシルエットを思い切り両手で胸を突き飛ばした。突如、背後から伸びてきた手がエリナの腕をつかむ。エリナと斎藤が引き離される。斎藤が驚いたような目でみずきを見た。その足が一歩後ろに下がり、地面を踏み外し、のけ反るように頭から崖下へ吸い込まれていく。途中に突き出た木の根や枝にごつんごつんとぶつかりながら転げていく。ぐしゃりと何かが潰れるような音がして、斎藤の体は湖の淵を埋め尽くす岩盤に叩きつけられた。真上から見ると、頭が半分潰れて両手足があらぬ方向へ曲がってしまった斎藤は、壊れたおもちゃのようだった。

「エリナ! 大丈夫か?」

 振り返ると、トオルがエリナを抱きしめていた。そういえば、マミが何か言ってたっけ……うまく考えがまとまらない。ただエリナの手から斎藤を永遠に奪い去ることができた。みずきは、その妙な爽快感に思考を支配されていた。

「斎藤くん……」

 エリナはトオルの腕の中から、呆然と崖下の壊れた斎藤を見つめている。みずきは笑った。もう、おかしくておかしくてたまらなかった。

「あはは、これで一樹くんはもうあんたのものにはならないわ。うふふ、だって一樹くんはわたしだけのものなんだもん。誰にも渡さないんだから」

 あはは、あはは。みずきは空に向かってげらげらと笑い声をあげた。おかしくて、おかしくてたまらなくて、涙を流しながら笑い続けた。


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