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私欲工場
【熟女/人妻 官能小説】

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第2話 美幸-2

就業前の工場内。
数十台と並ぶミシンの前に、同じ作業着に身を包んだ女の工員達が座り、作業前の準備に追われていた。
その窓際の後ろの一角に、数名の工員にとり囲まれたミシンに陣取る女が居た。

「ふふ・・・・・・心の準備はできた?」

「何言ってるのよ、まだ決まった分けじゃないわよ。」

「あらやだ、謙遜しちゃって。もう美幸さんで決まりよ。もう今から言っとく・・・・・・主任」

「ちょっと小野寺さんたら、本当にやめてよ。これで、違う人だったらどうするの?。私が馬鹿みたいじゃないのよ」

ミシンに陣取る女の名は、西村美幸と言った。
歳は50で、律子とほぼ変わらぬ歳のベテラン工員だった。
見た目は濃い化粧と、三角巾から覗く肩まで派手に明るく染められた、長いストレートパーマが印象的だった。
顔は面長で、少しキツイ性格を思わせる切れ長の目をしていたが、ハッキリとした二重瞼が魅力的な所もあった。
体格も、歳の為か少しふっくらとした中肉中背だが、作業ズボンの裾から覗く、網タイツに包まれた足の指先の赤いマニキュアが、女の魅力を維持する現れだった。
その美幸をとり囲む工員達も、ほぼ変わらぬ年齢だった。
その中の一人の、小野寺と言う女が、美幸を囃し立てていた。
これに対して美幸は謙遜しているが、心内のどこかでは喜びに溢れており、
終始ニヤ付いた赤いルージュの口元が物語っていた。

一方律子の方は、美幸より斜め三列前ほどのミシンの前に座って、静かに作業の準備をしていた。
律子もまた他の工員同様に、美幸が主任に選出される事を確信めいていた。
しかし、以前に大場から握られた手の感触を思い出すと、何か思惑がありそうで、不安に陥っていた。
律子は思わず作業の準備を止めて、その手のひらをしばらく眺めると、祈るように握りしめて目を瞑った。

ジリリリ・・・・・・

始業のベルが鳴ると工員達は手を止めて、姿勢を正して朝礼を待った。
美幸をとり囲んでいた工員達も、それぞれの席に戻っていた。
しばらくして、奥の事務室のドアが開いて、白のポロシャツに紺のスラックスを履いた20代後半くらいの男が出てきた。
その後ろには、大場も続いていた。

「おはようございます」

その男は、工員達の前に立つとマイクを持ち、あいさつを交わした。
男の名は、門倉昭人と言って、この縫製工場の専務だった。
若干27歳ながらも、ここ『門倉縫製』の次期社長候補だった。
もちろん、現社長の血縁関係で息子だった。

「え〜・・・みなさんも知っての通り、先日、主任の宮下さんがお亡くなりになられましたが・・・・・・」

専務の昭人が、宮下と言う女の亡くなった経緯を話すと、工場内からはすすり泣く声が、ちらほらと聞こえた。
例え原因が、宮下と言う女に非があっても、長期に渡り主任をこなしてきた人望から、慕う者も居た。
ただ、今の職に就いて年数の浅い専務の昭人に取ってはどうでも良い事であって、社交辞令のように朝礼をこなすだけだった。

「・・・・・・今後、このような事態が起きぬよう、私ども上役も全力を尽くすと共に皆さんのご協力も必要としておりますので、しばらくはこの門倉縫製の為にもお力添えを下さい。え〜・・・続いては、工場長お願いします」

専務の昭人があいさつを終えると、前方の片隅に立っていた大場にマイクを渡して引き継いだ。

「え〜・・・ただいま専務からもお話があった通りに宮下さんの事ですけど、私達従業員もこのまま彼女の死に対して悲しみ背負ってばかりではいけません。きちんと現実を受け止めて、一歩一歩前進しなければならないのです。それでまず、手始めに行わなければならない事は、彼女の代わりを決める事です。」

大場の言葉で、水を打ったように静かだった工場内も、小さくざわめきだした。
やはり工員達の関心は、同僚の死よりも、代わりの主任にあった。
当然、美幸に決まると思い込んだ工員達の視線は、その美幸に集中した。
それと裏腹に律子の心中は複雑で、このまま回りの思惑通りに美幸が選ばれて平穏に過ぎる事を祈るばかりだった。
律子は、その思いが届かんばかりの視線を大場に送っていた。
しかし、その大場の視線が突如律子と合った。
次の瞬間、律子の全身から血の気が引く思いが一気に駆け巡った。
そのまま大場は続けた。

「え〜私共も、厳選なる話し合いの結果、適任者を決めておりますので、それを今から発表いたしたいと思います。」

次の言葉の瞬間を回りが固唾を呑んで見守る中、律子と同様に大場の異変に気付いた美幸が表情を強張らせていた。
その大場の視線の先にある、律子の背中を鬼のような形相で睨みつけていたのだ。
律子も、自分を見入る変わらぬ大場の視線に、美幸が思惑通りでは無い事を察してるようで、背中越しに恐れていた。
そんな律子の運命を決める賽でも投げるように、大場は言葉を発した。

・・・・・・小宮・・・・・小宮律子さん・・・・・・

賽の目は・・・・・・・地獄へと辿る道筋を印した・・・・・・


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