妄想その3-2
「さあ、奥さん。入りなさい」
相変らず俯き加減のまま男に続く瑤子。
しかし、部屋に一歩足を踏み入れたとたん、室内の光景に足が止まってしまった。
赤や紫の小さな照明に照らされた、薄暗く隠微な部屋。
その真ん中には、いかにもといった派手な作りの大きなベッドが置かれていた。それは男と女の交尾のためだけの舞台といった雰囲気だった。
「今日は、たっぷりと楽しませてもらうとするかのう、奥さん…」
覚悟を決めてきたつもりでも、瑤子にとってはこんなことは初めての経験なのであろう。
ニヤけた顔で近づいてくる男に怯えて一歩後ずさってしまう。ハイヒールを履いた脚が震えていた。
「あ、あの…やさしく……お願いします」
「分かっておる。さあ、奥さん、そんなところに立ってないで、早くこっちに来なさい」
男は、不安そうな顔をしている瑤子を引っ張るようにベッドの傍まで連れてくると、立ったまま抱きすくめ、脂ぎった顔を押しかぶせうるように口付けしようとした。
「…ゃ…っ…」
男は、小さく悲鳴を上げる瑤子の上品な唇に強引に口を重ねてしまう。
瑤子の覚悟を確かめるかのように、細いウエストに回した腕に力を込め、分厚く粘っこい舌を瑤子の口の中に突っ込み、荒しまくる。
「んっ…やめっ…ん…!」
指輪の光る手で男を押し返そうとするのを許さず、さらに抱きすくめ密着すると、分厚い舌が瑤子の小さな舌を捕え、吸い込み、ネトッとした唾を送り始めた。
薄暗い部屋に卑猥な口付けの音と2人の息遣いが響き始める。
美しい人妻の罪悪感や後ろめたさをねじ伏せ、屈服していく様を見るのが男にとっては、この上ない楽しみであった。
瑤子は舌を弄ばれ続け、もう腰が砕けそうになっていた。
男の手が瑤子の身体を覆う上品なジャケットのボタンを外していく。
「い…いや…」
無意識にジャケットを抑えてしまう瑤子。
「ここまで来て何を言ってるんだ?奥さん…私の唾まで飲んでおいて」
言いながら、男は、ジャケットを抑える指輪の嵌った手を掴み、ジャケットから離させると、強引にジャケットを脱がしてしまう。
男の目の前に、眩しいほどに真っ白なインナーと、その胸元の豊かな膨らみが飛び込んできた。
欲情に掻き立てられ、男の目がギラついた。