Re:〜前編〜-8
「へぇ……綺麗だな」
そのチャクラムには繊細な装飾が施されており、一見すると武器には見えない。
「だろ?ドレスの時とかにアクセサリーとしてつけとくんだ」
いわゆる隠し武器。
「買うのか?」
「うん」
ニコニコと店主と値段交渉を始めたキャラの後ろから、アースは睨みをきかせて交渉の手助けをしてやった。
いくつかの武器を購入したキャラはご機嫌になり、心底嬉しそうに屋台の串焼き肉を頬張る。
「気が晴れたか?」
「ん。ありがとう」
心機一転、また頑張ってサガンの本に挑戦出来る。
「なら帰るか……さっきから首筋がチクチクする」
この感じは何かろくでもない事が起こりそうな予感だ、とアースは首を擦ってキャラを立たせた。
アースの魔獣部分の勘は鋭い……キャラも周りを見渡してみる。
「確かに……精霊達に落ち着きが無い……」
「だろ?セブじゃあんま暴れるワケにはいかねぇからな」
以前、山ひとつ吹っ飛ばしてしまい目の敵にされているのだ。
2人は目立たないように闇市を後にする。
……が、物事はそう簡単にいかない。
「!!」
ゾワッと背筋に寒気が走り、アースはキャラを抱き上げてその場から飛び退いた。
地面が緑色に光り、複雑な紋様を描いていく。
「魔法陣?!」
それは闇市全体を包むほどの大きさに広がった後、一際明るく光って発動した。
どうやらあらかじめ仕掛けられていたようだ。
「うおっ?!」
風を操ろうとしたアースだったが、ぐんっと引っ張られキャラごと地面に叩きつけられる。
「ぐ……ぅ……重力操作かよ……」
魔法陣内の重力が倍以上になっている。
体が重くて動けない……更に……。
(魔力封じか……?)
下腹辺りが絞め付けられる感じがする
キャラを押し潰さないように体を支えたアースは、魔法陣を解除しようと探るがうまくいかず舌打ちした。
「キアルリア、大丈夫か?」
「な……んとか」
とりあえず安心したアースはいったい誰がこんな事をするのか、と周囲の気配を探る。
この重力にも関わらず、何人か動いている気配がした。
ガチャガチャと音がするのでどうやら武器を運んでいるようだ。
これだけの武器を奪う輩など、ろくな人間じゃないだろうな、と思っていたら1人近づいて来る気配がする。