Re:〜前編〜-10
「試してみる?」
「遠慮する」
「いや、遠慮しても売られると思うが……」
緊張感のない会話に呆気にとられながら男が突っ込む。
「スネークのやり方は薬漬けにして従順にしてから売る……ったく……ドジ踏んだぜ」
自分達ほどではないが落ち着いた様子の男にアースは怪訝な顔をした。
「やけに詳しいんだな」
「言いたかないが、これでもセブの警備兵なんだ」
スネークの動向を探っていたらあっさり捕まってしまったらしい。
「はは……確かに間抜けだ……」
アースは苦笑して答える。
「で?セブの警備兵としてこれからどうするつもり?」
キャラは男に首を傾げて聞いた。
「どうするって言われてもなぁ……」
後ろで両手を縛っている縄は特殊な素材と結び方で、解く事も千切る事も出来ない。
「解く事も千切る事も出来ない……ね」
キャラはそう呟くと、ごそごそと腕を動かした。
コキン コキコキ
小気味良い音がしたと思ったら、キャラの両手が自由になり縄がパサリと落ちる。
「なら、抜ければいいんじゃね?」
関節を外して縄抜けをしたキャラは、得意気な顔をして指でつまんだ縄をプラプラ振って見せた。
「まあた、妙な特技持ってんなぁお前は」
「んふふ、謎多き女って魅力的だろ?」
キャラは買ったばかりのダガーを使ってアースと男の縄を切る。
「ね、アンタの間抜けぶりは分かったから名前教えて?」
キャラはサクッと酷い事を言いながら可愛く首を傾げて聞いた。
男はがっくり首を落として落ち込みながらポツリと答える。
「……モーガン……」
「オレはキャラ、こっちは旦那の……」
「オーウェンだ」
キャラの言葉に重ねて名乗った偽名にキャラは顔をしかめた。
よりによってその名前は無いだろう?と、睨むキャラからアースは視線を反らした。
咄嗟に出てきたのがそれだったのだから仕方ない。
本名は隣国セブにも轟く程に有名なのだ……あまり大事にしたくない。