第2章-2
エリカのその日の標的は、太徳寺商事の専務、秋場芳之輔だった。
前からエリカは、どうしてもこの会社との契約にこぎ着けたかった。
太徳寺商事は大手の会社であり、様々な商品を扱っている。
一時期には、
人気のあるタレントを使ってテレビでCMを流したこともある。
この会社の一部でも良いから何とか契約したかった。
そうすれば、この高名な会社との契約会社となり、
一目世間から注目されるからなのだ。
勘の鋭いエリカはそれを肌で感じていた。
まだ、ライバルは現れていなかったが、注目されいずれ話題にはなるだろう。
その手を、今の内に打っておかなければならない。
「なあ・・エリカ・・」
「はい、秋場様」
エリカは、この秋場芳之輔とは浅からぬ付き合いになっている。
秋場は、仕事上のプライオリティが最も高い大切な客の一人だった。
女好きな秋場は六本木にある高級ホテルで、裸のエリカを抱きながら言った。
これで裸のエリカを抱くのは三回目になる。
彼はすっかりエリカの虜になっていた。
こんなに美しく、聡明な女を彼は知らない。
今まで、自分は歳でもあり、女など抱く気にはならなかったが、
或る日から彼は目覚めた。
それはエリカに逢ってからである。
始めの頃、執拗にアタックしてくるエリカに戸惑いながらも、
その美貌と、素晴らしい肉体を惜しげもなくぶつけるエリカに興味を示したのだ。
それがエリカの術中にはまったと思いながらも騙されたと思い、
彼女を抱くと思いの外エリカは素直な女だった。
仕事に関しては、
男以上に意欲を燃やすこんな女は見たことがない。
「来週には東京で臨時総会があるから、
そのとき私はエリカの会社を紹介し、
お前の会社に有利なように取りはからってやろうと思う・・」
「ええっ?ほんとうですか、嬉しい秋場様」
「そうだよ、それも私はエリカともっと親しくなりたいからねえ」
「あん、嬉しい・・」
「そうすれば、いずれお前の会社も一部上場の会社になるだろうしな」
「嬉しい、秋場様・・」
エリカは豊満な身体を芳之輔に押しつけていた。
(ようやく、ここまでこぎ着けて来られたわ)
これでようやくエリカは自分の望みに一歩近づいた気がした。
「だから、これからもよろしくな、エリカ」