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〈四季の舘〉祈り〜櫻並木の唄〜
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〈四季の舘〉祈り〜櫻並木の唄〜-1

「うわぁ」
櫻並木の道。地面がピンク色になっている。
「すごぉい」
踏むのがもったいなくなってしまう。


 私は、依咲 絢華(イサキアヤカ)。今年から、高校生になった。

 私の通う学校は、いわゆる『お嬢様』が通うような学校。
「でも、私が入れたのだからそんなに身分とか関係無いのかも・・・」
 私の家はごくごく普通の家庭。お金持ちではない。

そもそもこの学校が『お嬢様』学校と言われるのは、制服に関係あるのだと思う。
 昔ながらのセーラー服は、膝下を守っている。勿論、制服をいじったりしている生徒は居ない。というか、見たことがない。
プラス、三つ折り靴下ときた。かろうじて靴はローファーでも良いのだが、流石は幼稚舎からある学校。バレエシューズのような靴が殆んどだ。

入試の時から思っていたのだが、皆さん言葉遣いが凄い。まるで、明治・大正時代に来たような感覚になってしまった。

入学して一番最初に驚いたのが、クラスメート達の上品さ。何よりも、誰も廊下や道を走らないというのでビックリだ。
何故かと問うと、
「マリア様が見ておられますから」
と、にっこりと微笑まれた。


「絢華さん」
ふと後ろから声がした。
振り向くと、顔馴染みの少女が立っていた。
「千香子さん」
少女の名は、若瀬 千香子(ワカセチカコ)。真っ黒な髪を肩で綺麗に揃えている、可愛い少女だ。
私が高等部から入ってきたので、入学式の時から何かと世話を焼いてくれる。
「ごきげんよう。部活に入ってないのに、お早い登校ですのね」
にっこりと笑われる。
「ごきげんよう。千香子さんこそ。吹奏楽部は朝練がないのでしょう?」
うふふふふ、と皮肉に皮肉を返す。
まぁ、吹奏楽部に入りません?と誘われて、即断った私も悪いのだが。いつまでも根に持つタイプだなーと感心してしまう。
「あら、私はお姉さまと約束がありますの。ー・・そうそう、絢華さんも早くお姉さまをお持ちになっては如何が?」
では、と最後まで皮肉を言いながら去っていった。


 桜蘭学園女子高等部の伝統の一つに、姉妹制度がある。先輩が後輩を指導するという理由で作られた制度だが、作るも作らないも個人の自由。
私のように、高等部から入った者には姉がとても必要だ。学園の行事など、色々分からないことが多いから。
まあ、私の場合は先輩方に知り合いが居ないから作るにも作れない。それに、友達に教えて貰うだけで十分分かる。
 千香子さんの姉は、確か妃 菖(キサキアヤメ)という人だ。腰まである長い黒髪が印象的な、綺麗な人。
 現在の『秋姫』の妹・・・つまり、『紅葉姫』だったはず。


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