少年-6
アパートを出ると、閑静な住宅街は、騒然としていた。
住民は、いない。
いるのは、警察と、報道機関の人間だろうか。
麦わら帽に、サングラス、厚手のコート。
少年は、何も気にすること無く、道をフラフラと歩いていた。
元々白い肌は、赤く腫れて火傷をしたように見える。
夕焼けが綺麗だった。
少年は、その夕焼け空を、少し恨めしそうに見つめた。
「おい、君! そこの君! 聞きたいことがあるんだ、署まで、ご同行願おう」
「抵抗は、しても無駄だ。完全に包囲されている」
「拳銃をこちらに渡し、降伏しなさい!」
大きな盾を構え、武装した警官隊の一団が見えた。
一丁の拳銃で出来たこと。
少年が得た、わずかな時間、見せかけの力と幸せ。
こんなものだった。
「やっぱり、幸せには、なれそうもないな。当たり前か……」
少年は近づいてくる警官隊を無表情に眺めながら、自嘲気味に呟いた。
「大人しく、拳銃を渡して、投降しなさい!」
少年は、懐から拳銃を取り出し、銃口を向けた。
向けたのは、警官隊にではなく、自分のこめかみにだった。
少年の口元が、ほんの少し笑っているように見えた。
「やめろ! やめるんだ! 早まるんじゃない! 罪を償うんだ、罪を――」
何人かの警官が少年を取り押さえようと、飛び込んできた。
だが、まだ距離がある。
少年は、必死に走りこむ警官の顔を見ながら、呟いた。
もし、罪を償うとすれば、人の手によるものではなくて――
「カ・ミ・サ・マ・ノ・イ・ウ・ト・オ・リ」
ぱん。
−完−