少年-3
「あら、何かあったのかしら。パトカーが外に出るなって」
「ヒトミさん、ちょっとテレビつけてもらっていいですか?」
ヒトミがテレビをつけると、特別番組が放送されていた。
『本日正午過ぎ、A市内で立て続けに二人の女性が暴行される事件が発生しました』
『犯人は、拳銃を持ったまま、依然として逃走を続けています』
『犯人は、麦わら帽、サングラス、厚手のコートを身にまとった少年とみられ――』
『施設から脱走し――紫外線を浴びると衰弱する難病を患っており――』
「だいぶ、大事になってるみたいですね」
「そんな……あなた、まさか――」
「ええ。これでもまだ、幸せになれますか?」
少年は、懐から拳銃を取り出して見せた。
ヒトミの顔が、拳銃を見てこわばっていく。
「子供には、手を出さないで」
「よく眠ってますね。それなら、ヒトミさんには手を出してもいいのかな?」
「……」
「旦那さんしか、知らないんでしょう? あとひとりくらい知っててもバチは当たりませんよ」
「こんな事をしても、幸せにはなれないわよ」
「今、十分幸せですよ。こんな力を手にして、人を思い通りに動かしているんだから。じゃあ、とりあえず裸になってください」
少年が拳銃を子供に向ける仕草をすると、ヒトミは顔をしかめて服を脱ぎ始めた。
少々小柄なあどけない容姿に似つかわしくない、豊かな胸、豊かな尻をしている。
ヒトミは全裸になり、歯を食いしばり、少年をきっと見据えた。
片手で胸を、片手で股間を隠している。
少年は、サングラスをかけた無表情のまま、ヒトミの肢体を眺めている。