暴走-1
少年が、肩を上下させ、息を切らせて歩いていた。
少し走ったのか、あるいは体力が無いのか、何か他の理由があるのかはわからない。
先程の公園から数キロ離れた所の、ほんの小さな公園。
申し訳程度の砂場と、ブランコと、ベンチと、トイレ。
それくらいしかない小さな公園に、スーツ姿の女性がベンチに座っていた。
そのベンチに、息を切らせながら、異様ないでたちをした少年が近づいていく。
「はぁ……どうも、こんにちは。今日は随分、暑いですね」
「ええ、こんにちは。晴れてはいますけど、そんなに暑いかしら?」
「僕にとっては、たまらない暑さですね……体が焼けそうですよ」
「……失礼ですけど、そんなに厚着をなさってるからでは?」
女性は、少年を怪訝そうに見やる。
吸い込まれそうな白いシャツの上に、皺一つない黒いスーツを完璧に着こなし、タイトな黒いスカートの上に手を置いている。
肩下までありそうな髪は上にまとめて、濃すぎず薄すぎず、きれいに化粧をしている。
ほんの少しまなじりの下がった大きな瞳が、肉感的なスタイルとあいまって色気を感じさせる。
女性の横には鞄が置いてあった。きっと、仕事中なのであろう。