銃声-1
ぱん。
乾いた音が、閑静な住宅街の中にある公園に響いた。
厚手のコートを纏った少年が、あれ? という顔をして、公園の砂場に佇んでいる。
眼にはサングラス、頭には麦わら帽。
初夏ではあったが、少々異様ないでたちである。
そして、その少年の手には、拳銃が握られている。
銃口から、硝煙がふんわりと流れ出ていた。
その煙を、少年は夢でも見ているかのような表情で、ただぼんやり見つめていた。
少年は中肉中背で、男性にしてはやや華奢な体つきであるかもしれない。
肌をほとんど露出させていない少年の顔色は、透き通るように白い。
サングラスの奥の瞳は、どこにも行くあてのない老いた猫のように淀んで見える。
少々不可思議な雰囲気を持ったこの少年は、どこか中性的な顔立ちで、見ようによっては神秘的な趣もあった。
正午を知らせるサイレンが鳴ると、拳銃を握ったまま硬直していた少年がピクリと動いた。
握った拳銃は、懐にしまった。
少年は、無表情だ。
だが、どこか彼の口の端がわずかに歪んで見えたのは、気のせいなのだろうか。