銃声-3
「ね? 僕も最初モデルガンだと思ったんだけど、どうも本物みたいなんだ」
「あ……あの」
「で、忙しい所悪いんだけどさ、少し僕に付き合ってくれるかな?」
「あ……ああ……」
「大丈夫だよ、言うことを聞いてくれれば、そんなにひどいことはしないよ。ね?」
不運な少女は、この非日常とどう向きあえばいいのかわからない。
まだ、中学生なのだ。
いや、どんな世代であっても、どうしていいのかわからなくなってしまうに違いない。
ただ、口を半開きにして、呆然とするしかなかった。
「ああ、まだ名前聞いてなかったね。名前、教えてくれる?」
「……ハ、ルカ」
「ハルカちゃんか、いい名前だね。じゃあ、ちょっと場所を代えようか、ハルカちゃん?」
少年は、右手に拳銃を握りしめ、穏やかにハルカに囁いた。
どこか得体のしれない、少年の混濁したような瞳がサングラスの奥でハルカを見つめていた。
「公園のトイレにしては、広くて綺麗だね。障害者用のトイレって初めて入ったけど」
「……」
「そんなに怖がらなくてもいいよ。ただ女の子と話がしたいなって思っただけでさ。やっぱり、僕のこと怖いかい?」
「そりゃ、拳銃持ってる人が怖くないわけないわ……」
「そうか、そうだよね。さっき言ったけど、たまたま拾っちゃってね」
「警察に、届ければいいでしょう」
「最初は、そう思ったんだ。でも、拳銃を手にする機会なんて、この先無いとも思ってさ。そしたら、何かもったいなくなって。なんとなく公園に戻ったら、君がいたのさ」
「もったいないって……あなた、犯罪者になってしまうのよ?」
「うん、そうだね。でもさ、面白そうじゃない? これをこうやってさ……」
少年は、ハルカに銃口を向ける。
ハルカは身をかがめて目をつぶり、腕で頭を抱えるようにした。