銃声-2
今時少々珍しい三つ編みの髪を左右にぶら下げたセーラー服の女の子が、公園のベンチに腰掛けている。
大きく膨らんだ鞄を足元に置いて、少々疲れたような顔をして休んでいる。
その古風で真面目そうな女の子がペットボトルを手に取り、お茶を少し口にした時、先程の少年が不意にそのベンチの隣に座った。
女の子は、少年の奇妙な身なりに少したじろいだ。
「やあ、どうもこんにちは。あの、君、もしかしてさっきここにいたかな?」
「こんにちは……わたしは、ここには今来たばかりですけど」
「あ、そうなんだ。実は僕、さっきここで遊んでてね。見られてたらマズいなって」
「ここは公園ですし、別に遊んでもいいんじゃないですか?」
「まあ、そうなんだけどね。あ、君、中学生かな? 今日はテストとか?」
「ええ、そうですね。今、テスト期間で、学校早く終わるんで」
「じゃあ、僕よりはいくつか下なのかな。ねぇ、学校って楽しい?」
「どちらとも、言えないですかね」
「そう。僕は少々退屈かな。さっき、その退屈を凌げそうなものを拾ったんだけどね」
「拾った?」
「うん。実は、これなんだ」
そう言うと、少年は懐から拳銃を取り出した。
少女は一瞬ギョッとした表情をしたが、さっきの少年の言葉を思い出したようだ。
「えっと、さっき遊んでたって、そのモデルガンの事なんですか?」
「そうなんだ。モデルガンに見えるだろう?」
「見えるだろうって、モデルガンなんでしょう?」
「ちょっと、その鞄貸してくれるかな?」
「え、わたしの鞄を的に使うんですか? 傷つくからやめてください」
「大丈夫、大丈夫」
奇妙な格好の少年は初対面の少女に対し、やけに図々しい。
ただ、少年はとても穏やかで、淀みなく丁寧な口調で話をする。
相手の女の子は、そんな少年にいつの間にか心を許していた。
しかし、少女は同時に少し訝しんでいる。
静かに公園で休憩をとるつもりが、馴れ馴れしい少年にすっかり時間をとられていた。
新手のナンパなんだろうか。そんな事を思っていたのかもしれない。
少女は、自分の鞄に銃を向けている少年を、呆れた顔で見つめている。
ぱん。
乾いた音が、公園に再度響いた。
鞄には、穴が開いている。
少女の顔色が変わっていた。驚愕の表情。
少女の日常が、非日常へ変わった瞬間だった。