バッドエンドロール-7
「あんなに……、怒ることなかったのに」
「……いいんだよ、俺が嫌だったから。アズなんて、呼んでいーのは俺だけでしょ?」
幼馴染みでもいい。
そんなことを真面目に思わせてしまうくらい嬉しかった。
翔はたぶん意識して言ったわけじゃないから余計に嬉しかった。
まるで、…『特別』みたいだったから。
そのすべてが気持ちよくて――でも思い知った。
私は結局、翔にとって幼馴染みでしかない。
お姫様にはなれない。
脇役にもなりきれない。
なら、どうすればいいの?
答えは誰ももっていなくて、誰にも翔のお姫様になる権利をあげたくない私は、お姫様に意地悪で、ハッピーエンドには必要ない、魔女になるしかなくて。
でも、せめてゆるして。
魔女だって、王子様がすきなこと。
だから、王子様がお姫様と迎えるハッピーエンドを願えるまで。
意地悪くらい、ゆるして。
それなのに――それでも私はどこかで願ってしまう。
翔の、お姫様になりたい。
――お姉ちゃんになりたい。
――お姉ちゃんになれたら。
なれっこ、ないのに。
翔の好きな人がお姉ちゃんでよかった。
そんなの結局強がりでしかない。
綺麗事でうまく自分をごまかしているだけ。
だっておねえちゃんが羨ましい、…妬ましい。
翔の心を軽々と奪ってしまったお姫様は残酷にもその年の差で、王子様の気持ちに気づかないまま『可愛い弟』だなんて笑いかけるのだ。
……翔の心をちょうだい。
気づかないくらいなら、ちょうだい。
……私が、翔の心を奪えたら、よかったのに。
優しいお姉ちゃんの妹だなんてとても思えない私の醜いまでの恋情。