The guard who loves me-30
館の2階、ある意味不用心な一室は夜の帳が終えた後も、
屋外の花火の光と
ベット隅に置かれているであろう灯りのおかげで、
辛うじて室内それも奥の方にあるベット周辺の状況は分かる。
花火の音が響き渡り、かつ窓が締め切られているため中からの声や音は聞こえない。
しかし、もし外から望遠鏡なんかで室内の様子を覗き見するものがいたとすれば、
その者はベットの上に腰を下ろして窓側に背を向けている黒髪の女が纏っている青いサリーを見ることになるだろう。
背を屈めている彼女の顔は無論のこと、
彼女がまたがっていると思われる人物の姿も、外からは死角や影になっていて判然としない。
青いサリーがゆっくりと上下に動いている。
そして俯き加減だった女の身体が弓なりに反り返り、
黒髪がまるで宙を乱舞するかなように、頭は何度も前後に大きく揺れ動いた。
下から男の腕が女の背中に伸びてくる。
右手が女の肩付近にかかり、肩口のサリーを掴んだまま女の肘付近にひっかかるところまで引き下げていった。
左手はまるで撫でるように5本の指を大きく広げ、
女の腰や尻付近で円を描き掴むような動作をする。
これらの動作の最中も、
女の上下の動きはゆっくりとしたものだったが、続いている。
そして 突然女の身体の上下の動きがピタリと止まり、
その身体が硬直したような状態になる。
そして微かに身体の細かい部分が痙攣しているかのように揺れている。
そんな状態もほんの僅かの時間だった。
先程とはうってかわって脱力したかのように、その上半身がゆっくりと前屈みに倒れこむ。
それと入れ換わるようにして、
女の下にいた男の影がむくりと起き上がり、
倒れ込んでくる女と抱きすくめるようにして逆に上から覆い被さった。
黒い影の中に飲み込まれていくかのように、外から青いサリーとそれを着る女の姿は見えなくなり、
まるで示しあわせたかのように今まで空に向かって打ち上げられていた花火もその音響と無数の光を放つのを止めた――――