The guard who loves me-14
――――あえて組織の中に組み込まれたのも、行方不明の妹を探すのに好都合だったからだった。
右上腕の“ルシの紋章”は聖府によって刻印されたもので、
詳しい原理は分からないが、どこにいようと行き先が分かる自己位置識別機能の一種。
これがあるために、ファング含めた組織の人間は脱走・裏切りが不可能となり、
場所を標定された上で逆に暗殺者を差し向けられる。
ファングも2度裏切り者の抹殺を遂行した経験があり、
当然ながら自分でも組織の鉄の掟と非情さ・執念深さを身に沁みて知っている。
先ほど諦めの境地に至ったのもそういう“理由”があるからだった。
それでもなお組織に属してきたのは、
ひとえに行方不明の妹を探したい想いが強かったから――――
「このまま逃げても、聖府から追っ手を受け続ける。妹に逢えなかったのが心残りだが、ここら辺が潮時なんだろうな・・・」
告白調から一転、自嘲ぎみに呟くファング。
ラグナは無言のまま、ファングの横顔を見つめている。
「おとなしく聞かせてもらっていたが・・・妹さんのことはあったとしても・・・・・つまらんな」
「 !! 何だと・・・・」
「・・・もったいないんだよ。お前は良い女なのに、自分のことはそっちのけの人生・・・・。
まだ“女の喜び”を知らないままに死ぬつもりなのが・・・・」
「ふざけんな!!じゃあ何か?お前なら私に“女の喜び”とやらを教えることができるっていうのかよ?!!」
「・・・・・」
「私だって、自分が女らしくないなんて百も承知さ。
だがてめぇにそんなことまで言われる筋合いはないんだよ!!!」
言葉を発しながら次第に興奮してきたのか、その口調が乱暴なものに変わっていくファング。
そんな彼女の真っ直ぐ自分を睨み付けてくる視線を受け止めつつ、
ここで初めてラグナ自身も椅子から腰を上げ、ほぼ同じ視線で目の前に立つファングを見返した。