The guard who loves me-10
(・・・まあ、気休めだな)
そうひとりごちだラグナは、改めて自分のいるテントの隣にある“彼女”のいるテントに目をやった。
昼間にテントを建て終わってから、彼女を運び込んで相当時間が経つのだが、
まだ起きた気配はない。
一応武器一切は自分のテントに移しているし、
念のため彼女が着ていたサリーや装飾品一切は全て取り外してある。
今彼女はラグナがここが来るまでに購入しておいた白シャツや半ジーンズを着せてもらっている状態だった。
(・・・・・・・・)
ラグナの脳裏に、女刺客の“日に焼けた裸体”の記憶がまざまざと蘇ってきた。
女好きで女体の扱いに慣れているラグナから見ても、
当初の予測通り女刺客の無駄な肉がついていない均整のとれた裸体は十分“合格点”を与えられる代物だった。
(・・・左肩のタトゥー、それに右上腕部にある“ルシの烙印”から考えても、
恐らく私の仕事を妨害しようとした聖府の回し者だろうが・・・・・。
しかし刺客とはいえ勿体無いな。
あまり経験はなさそうだったから、開発次第では“名器”になりうる・・・・)
―――ガサッ・・・ガサッ・・・・
―――パキッ・・・・・
「 !! 」
隣のテントの方から微かに聞こえてくる草擦れの音、
それに続く小枝を踏みしめた音に、
ラグナは先程までの物思いをやめてテントの入口方向に視線を走らせていた。
ランタンの灯りに照らされる形で星空を背景に浮かび上がらせた姿は、
先程までラグナの脳裏に蘇っていた裸体。
胸元のボタンを上半分くつろげさせ両裾は束にして大きく括り、
細い太股と形の良い尻を半ジーンズで覆っている格好。
両手を背中の後ろに回してはいるものの、
その身体からはつい数時間前まで剥き出しにしていた殺気は感じられない。
ただ無表情のまま、鋭い視線をラグナに向けている
女刺客その人がそこに佇んでいた。