忌まわしい記憶-6
爛々と目を輝かせ、舌舐めずりをする岡田の横顔は爬虫類のそれに酷似していた。エリナは岡田の手を自分の膝に置いた。エリナの両手から解放された指たちは、たちまち太ももの隙間を割ってスカートの中に潜り込む。指先が下着に触れる。ため息が漏れる。
「こんな話をする男を、君は怖いと思わないのかい? もしかしたらこのまま、ぼくは君を別荘に連れ込んで殺してしまうかもしれないのに」
岡田の指たちはいつものように上手にエリナを可愛がる。トンネルを抜けて、今度は大粒の雨がフロントガラスを打ち鳴らす。指が動きやすいように少し足を広げながら、エリナは岡田を見つめた。岡田の視線は正面を見据えたまま動かない。
「わたしを殺したいのなら、もっと早くにそうしていたはずだわ……」
「最初は、君もそのひとりになるはずだった。でもね、うまく言えないんだが……他人のような気がしなかった。似ている、と思った。こんなに歳も違うのに、おかしいだろ? 少し話して、セックスして、その後にどうしてもいつものように殺そうとは思えなかったんだ」
似ている。それはエリナも感じていたことだった。どこがどうというのではない。強いて共通点をあげるなら、どんな犠牲を払っても自身の欲望を満たさずにはいられないところだろうか。世間の常識も、法にも縛られない。欲しいと思ったものをあらゆる手段を使って手に入れる。たとえ誰かの血を見ることになったとしても。
指は下着の横から陰部を探り始める。くすぐったいような感覚から、それは確かな快感へと変貌を遂げていく。声が漏れる。背筋が反り返る。下着と洋服の上から縛り付けるシートベルトが乳首に触れただけで過敏に反応してしまう。
「あ……気持ち、いい」
岡田が左にウインカーを出す。左車線に寄り、少しスピードを緩めて笑う。フロントガラスの上を左右に揺れるワイパーが、雨の雫を流していく。
「気持ちいいところに貪欲なところが似ているのかな……少し休憩しよう」
左車線をしばらく走ったところで、目についたサービスエリアに入った。寂れた売店や自動販売機の並んだ建物の裏側にまわり、雨に濡れながらキスをした。ついばむような軽いキスを繰り返し、岡田はエリナを腕に抱いたまま微笑んだ。
「僕は君を殺さない。でも僕から逃げようとしたら、殺してしまうかもしれない」
「逃げないわ……殺されても、かまわない。でも、今夜が終わるまでは、だめ」
「あはは、恋人とのセックス、か。それなのに今は僕とこんなことをしている。ほら、もうこんなに……」
岡田の指先が再びエリナの陰部を掻きまわす。下着の中は雨に濡れているはずの髪よりも、もっとぐっしょりと濡れそぼっていることだろう。下着を脱ぎ、岡田を挑発するように尻を突き出し、指で陰部の襞を広げて見せた。
「ここで、して」