終わりのない恥辱-2
あの、男たちにマミを輪姦させた翌朝。目を覚ましたマミは、まず最初に強烈なのどの渇きを訴えた。
「お水……ちょうだい……」
みずきは壁ぎわに備え付けられた水道の蛇口をひねり、ほこりや泥が付着したバケツいっぱいに水を汲み、地面に横になったままのマミに頭からその濁った水を浴びせかけた。大塚が楽しそうに口笛を吹く。傷に染みるのか、痛い痛いと呻きながら素っ裸で転げまわる姿が滑稽だった。それでもよほど水が欲しかったのか、マミは唇や手についたわずかな水滴を力無く舐めていた。
「ねえ、マミ。昨日の夜は楽しかったね。ほら、こんなになっちゃって」
マミの全身には青や黄色のあざがいくつもでき、殴られた頬は赤く腫れ、性器や肛門には乱暴に突っ込まれたときに流れた血の跡が生々しく残っていた。携帯電話を手に取り、焦点の合わない目で虚空を見つめるマミの目の前に差し出した。ボリュームを最大にする。男たちの笑い声に交じって、『もっと、もっと』とねだるマミの声が流れ出す。
画面を凝視したマミが目を見開いて人形のように固まる。そのまま、動画も画像も記録したものをすべて間近で見せつけた。
「な……何なの、これ、わたし、こんな……ねえ、どうして?みずき、わたしたち友達じゃなかったの?」
「マミ、友達だからわたしのためにできることはなんでもしてくれるんでしょ?そう言ったよね。だから、まずはわたしの気持ちをわかってもらいたかったのよ」
好きでもない男に犯される気持ちを。思う相手と結ばれない苦しみを。マミはようやく体を起し、切り裂かれ泥まみれになったワンピースを拾い上げ、体を隠しながらすすり泣いた。
「おかしいよ……みずき、こんなの、絶対おかしいよ……」
「誰にも言わないって約束したのに、トオルくんに告げ口したのは誰?それはおかしくないの?『友達』がこんなに苦しくて悲しくてどうしようもないときに、自分だけ好きな人とうまくいってるのを見せつけるのはおかしくないの?ねえ、マミ、どうなのよ、答えなさいよ!」
自分の言葉が感情を昂ぶらせていく。体を小さく折りたたんで泣き続けるマミの足を思い切り蹴った。やめて、やめてと顔を覆って泣く姿を見るとよけいにやめられなくなった。髪をつかんで頭を壁に打ち付けた。倒れたマミをまた左右の足で交互に蹴り続けた。
「ねえ、どうなの?謝りなさいよ、わたしの気持なんか何にも考えてなかったじゃない、ねえ、土下座してあやまりなさいよ!」
「ごめ……ごめんなさい、みずき、わ、わたし、そんなつもりじゃ……」
「あんたがどんなつもりだったかなんて聞いてない!ちゃんと土下座して謝れって言ってるのよ!」
マミはみずきの言葉がもう聞こえないように、ただ床に突っ伏して泣き続けるだけだった。さらにマミに手を上げようとするみずきを、大塚が背中からはがいじめにして止めた。
「おい、死んじまうぞ。そのへんでいいだろ……こいつにはこれからも役に立ってもらいたいからな」
力が抜けて床にへたりこむみずきを、マミは怯えた目で見つめていた。小さな声で「ごめんなさい、ごめんなさい」と繰り返しているのが聞こえた。車を取りに行ってくる、と大塚が出ていった後、みずきはゆっくりと諭すようにマミに話した。