ニチヨウビ-5
朝に集合していた場所で待っていると、チームメンバーに混ざってショウもやって来た。
他のメンバーはバスでもうこれから帰るらしい。
止まっている送迎バスに乗り込んでいく。ショウがそのメンバーに挨拶していた。
バスには、タツヤも乗るらしく、わたしを見つけて一言言った。
「返事、お願いしますよ、サオリさん」
それだけ言って、ニコリと微笑み乗車していく。
名前はショウに聞いたのだろうか。
ショウが出ていくバスに手を降っている。
わたしは、窓際に座るタツヤと目が合い、軽く会釈をした。
タツヤは、微笑んだまま、敬礼のようなポーズをとっていた。
「皆、行っちゃったわね。ショウ君も帰らなくてよかったの? 家が恋しくない?」
「僕は、サオリさんと一緒に居たいです」
「あら、嬉しいわ。じゃあ、どこかでお弁当食べましょうか?」
グラウンドの周辺の芝生にシーツを敷き、そこにショウと座った。
ショウのわたしを伺うような視線に、何かチクチクと刺激される。
わたしとショウとの約束の答え。それが、気になっているのだろうか。
何と答えようか、わたしも迷っていた。
弁当は簡単なサンドイッチを作った。
それをショウに手渡し、わたしもひとつ頬張る。
ショウもそれを頬張りながら、一言言った。
「あの、タツヤさんと、何を話していたんですか?」
「え? あぁ、わたしサッカー知らないから、解説してくれたのよ」
「サオリさんは、タツヤさんと初めて会ったんですよね?」
「そうね、客席にたまたまいらして、試合の間お話ししてたのよ」
「ふぅん。何か、誘われたりとかしませんでした?」
「えぇ? 別に……そんな事はなかったけど、どうしてそんな事聞くの?」
「タツヤさん、元々プロ選手だし、格好いいから」
「へぇ、もしかして、ショウ君ヤキモチ妬いてくれたんだ?」
「……」
「わたし、初めて会った人の誘いに乗ったりしないわよ。それに、ショウ君の方が好きだしね」
「あ、あの昨日の約束……」
「そういえば、後半にバテて交代させられたでしょう?」
「あれは……」
「でも、ハットトリックって凄いんですってね。教えてもらったわ」
「あ、じゃ、じゃあ、昨日の続き、いいんですよね?」
「もう、ショウ君たら。その前に、お弁当食べましょう?」
「は、はい」
試合の疲れはどこへやら、ショウはあの事ばかり考えているようだ。
わたしは、逸るショウをなだめるので手一杯だ。
だが、そういうふうに想われるのも、嫌いではない。むしろドキドキしてしまう。
昨日の続き……想像すると、体が少々熱くなってしまう。
ショウがサンドイッチを食べながら、わたしの体を横目で見ていた。
20歳違う小学生の甥に、この体を捧げることになるのだろうか。
ショウは試合で結果を出した。
わたしも、多少覚悟を決める必要がありそうだと思った。