ニチヨウビ-15
翌日、わたしとショウは空港にいた。
2年前のショウは、お年玉を貰って喜んでいるようなごく普通の子供だった。
まさか、その後こんな事になってしまうとは。
女の子の成長は早いとよく言うが、男の子の場合もそれにひけをとらないではないか。
ショウの、少し落ち着いた顔を見てそう思った。
「さ、ショウ君、もうそろそろ時間じゃないかしら?」
「あ、あのサオリさん、また、その……」
「フフ、そうね。またショウ君が頑張ってくれたら、考えてあげてもいいわ」
「僕、またサオリさんに会ってもらえるように、頑張ります!」
「もう。昨日みたいなこと、したいだけでしょう?」
「そんなことは……」
「じゃあ、最後に、ちょっとこっちに来て」
ショウを物陰に呼び寄せると、わたしは彼にキスをした。
ショウは少し戸惑ったが、キスに応じた。今までセックスはしたが、キスはしていない。
順番が逆になったが、これで体の付き合い方は全て教えることになってしまった。
ショウの唇に舌を差し入れると、ショウも真似をして同じようにした。
やがて、ショウの舌がわたしの口の中で暴れだした。
「ふぅ……これで、終わりよ」
「サオリさん、僕、また……」
ショウがもじもじと股間を押さえている。
「それは、我慢しなさい。昨日いっぱいしたでしょう? 男は我慢も覚えなきゃ」
「うう、はい、分かりました……」
ショウは諦めたように、わたしから離れ、空港の搭乗口に向かう。
「じゃあ、サオリさん。あの……ありがとうございました」
「うん、またね」
ショウは頭をペコペコさせながら、搭乗口の奥に去っていった。
わたしはそれを手を振って見送ると、空港の屋上から飛行機が離陸するまで見守った。
ショウは、間もなく学校でちゃんとした彼女を作っていくのだろう。
わたしは、なんとなく、それを確信していた。
それが当たり前だし、そうなるべきだった。
ショウの実家がわたしの家から離れていてよかった。
ショウが、わたしにおかしな依存をしなくて済むからだ。あるいは、わたしも……。
この距離が、ショウとわたしをクールダウンさせてくれるのだろう。
それでも、ショウがわたしを求めてきたら、どうしようか。その時は――――
考えても、仕方がない。
とりあえず、わたしはわたしの幸せをまず求めたい。
クボタタツヤという男から、誘いを受けていたのを思い出した。
財布の中に、彼の名刺が入っていた。元プロサッカー選手の指導者の卵か……。
軟派そうな遊び人風の男だったが、子供好きで人の内面をよく見るシビアな所もあった。
サッカーの試合を見たいと言っていたな。見るだけだったら……。
空高く飛んで行く飛行機から出来る飛行機雲を見ながら、わたしは次の恋を探していた。
−完−