時の邂逅 〜追記〜-5
「この子の命が……助かる確率が……1%あれば……それに賭ける……それよりも……」
アキは息を吸ってグロウを見据えた。
「貴方は……それでいいの……?」
会ったばかりの人間に……馬車の中で少し話をしただけの相手に、自分の人生の一部を任せる事が出来るのか。
グロウは目を閉じて口角を上げる。
『俺は……長く生きてきた……ここらで少し休憩するさ』
グロウは身を屈めてアキの額にキスを落とした。
『それに、未来の使者が予言してたしな』
小さく呟いたグロウの体が細かい光に包まれて、輪郭がぼやけ始める。
「?……ねぇ……貴方の名前……」
光の粒に変化しながらグロウは笑うが、名前は答えなかった。
『……これから宜しくな……母さん……』
グロウが完全に光の粒になり、アキを包む。
その光はアキの口から胎内に入り、身体を満たす。
「!!?」
アキは声も出せずに目を見開いて背中を反らした。
ガクガクと何度も身体が跳ねて長い時間が過ぎる。
その数分後、お湯を沸かした女性が戻ると、そこには穏やかに眠るアキ以外に……誰も居なかった。