投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

ゼビア・ズ・サイドストーリー
【ファンタジー 官能小説】

ゼビア・ズ・サイドストーリーの最初へ ゼビア・ズ・サイドストーリー 120 ゼビア・ズ・サイドストーリー 122 ゼビア・ズ・サイドストーリーの最後へ

時の邂逅 〜追記〜-4

『入るぞ』

 一応断ってから中に入ると、お腹を抱えて唸るアキとその背中を擦る女性。
 アキの足の間からは大量の血が流れていた。

『何ヶ月だ?』

「……は…ち……」

 アキは荒い呼吸をしながらなんとか答える。
 アキの答えにグロウは軽く舌打ちした。
 ちゃんとした設備のある病院なら8ヶ月で産まれても何とかなりそうだが、山奥の洞窟じゃどうしようもない。

『アンタ、どうにかしてお湯を沸かしてくれないか?あっちに居る男らと協力して』

「は、はい」

 グロウが青ざめている女性に頼むと、女性はふらふらしながら入口の方へ行った。
 女性が出ていって男達と話すのを確認したグロウは、アキのお腹に手を置く。
 魔力を少し流しこんで胎児の様子を探るのだ。

《子宮収縮をおこしてる……胎児の脈が弱いな……》

 アキは脂汗を流してとてもつらそうだ。

 何か……何か方法は……?

《!!これか?!》

 500年前にデレクシスが言っていた、未来の自分の信じられない行動……人間の胎児に寄生するという事。
 それならばグロウの魔力でアキも胎児もこの窮地は乗り越えられるかも知れないが……魔獣の魔力にこの2人が耐えられるかどうか、確信が無い。

『……アキ……賭けをしないか?』

「……賭…け……?」

『もしかしたら、助かるかも知れん』

 グロウの表情は少し陰っており、その賭けが危険な事を表していた。

「……倍率……高そうね……」

『そうだな……』

「話して」

 アキの顔に張り付いた髪を掻きあげてやりながらグロウは説明する。

『俺は魔獣っていって、人外の生き物だ。俺が子供に寄生……つうか、同化できればこの危機は乗り越えられるかも知れん』

「出…来なかったら……?」

『アンタと子供はスプラッタだ』

 魔力に負けて内側から弾け飛ぶ。

『正直な話、俺はやりたくない。アンタ、今旦那……スタンが居なくて心細いだろ?酷い事言うが、ぶっちゃけ死んでると思うし……その自暴自棄な状態だと絶対に耐えられない』

 グロウの言葉にアキは少し微笑んだ。

「自暴自棄……なんかじゃ……ない…わ……スタンが死んだなら……なおのこと……私が…この子を守らなきゃ」

 アキの目は決意に満ちており、グロウは心底驚く。
 母親とはなんと強い生き物なんだろう……何かを守る立場になれば人はどこまでも強くなれる。

『……うまくいく確率は無いに等しいし、産まれてくる子供も俺が遺伝子レベルで同化するから半分人間じゃない。更に、将来的に俺が子供を喰い破るかもしれん……それでもやるか?』

 グロウの話す内容はハッキリ言って無謀としか言い様のない先の暗い話。


ゼビア・ズ・サイドストーリーの最初へ ゼビア・ズ・サイドストーリー 120 ゼビア・ズ・サイドストーリー 122 ゼビア・ズ・サイドストーリーの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前