last-15
「久しぶりなのに、また会えなくなるのね」
「同性婚がどんなものか、肌に触れてみたくなったのよ」
そう語った真由美の眼は、輝いている。
薫は、困惑の表情をし、次に笑顔が弾けた。
「おめでとう、お姉ちゃん」
「本当に……ずいぶんと掛かったわね」
「お祝いしましょうッ。わたしの部屋で」
「あんたも来ない?」
「わたしが?何故」
「こっちは住み難いわ。向こうで、わたし逹と三人なら、あんたも向こうなら暮らし易いかと思ってね……」
薫の為に、真由美は今の職業に就いた。
唯、弟を救いたい想いから。
だが、彼女の思惑通りにはいかなかった。
──姉の中にある贖罪の念は、まだ解けていないのだと薫は思い、そして憂いた。
「お姉ちゃん、ありがとう。今でもわたしの心配をしてくれてるのね」
「当たり前でしょう。大事な弟だもの」
「でも、カルフォルニアへは二人で行って。わたしは此処で頑張るから」
真由美の目が、哀しみの色を湛えた。
「残念ね。また、あの頃の様に暮らしたかったわ」
「そのうち、遊びに行くから」
店を閉じた薫は、真由美と共に寄り添って繁華街の中をに歩いて行った。
派手なディスプレイで彩られていた街も、眠る時刻を迎えていた。
「カオル」last完