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恋敵は"ちぃちゃん"
【片思い 恋愛小説】

恋敵は 恋敵は 恋敵は 恋敵は

恋敵は"ちぃちゃん"-1

「ヤバッ遅刻だ!」
時計を見た私は慌てて家を飛び出した。学校に向かって走り始めると、幼なじみで隣に住んでいる雅樹がゆっくりと歩いているのが見えた。
「何してるの?遅刻するよ!」
私が声をかけると
「えっ?」
雅樹は不思議そうな顔をした。
「えっ!?」
携帯を取り出して時間を確認すると余裕で間に合う時間だった。
「チェッお母さん時計の針を進めてたのね!走って損した!」
私が舌打ちすると
「何言ってるの!いつもギリギリまでゆっくりしていて、慌てて飛び出して行くからだろ!」
「それはそうなんだけど....」
雅樹の言葉に返す言葉がなかった。
私の名前は中田千聖(なかだちさと)高校三年生。こいつは宮城雅樹(みやぎまさき)私と同じ高校の三年生だ。こいつは私の初恋の相手で....悔しいけど今もこいつの事が好きなままだった....悔しいけど?....それはこいつが....私の事なんか眼中になくアイドルに夢中になっているからだ!
こいつが夢中になっているアイドル....それは今最も輝いているアイドルグループに所属している"ちぃちゃん"こと"中田ちさと"....私と似た名前....


それは四年程前の事だった....
「ねぇ雅樹知ってる?私と同じ名前のアイドルがいるんだよ!」
私はそう言って雅樹のパソコンを操作した。
「えっ?漢字が違うし、千聖は"なかだ"でこっちは"なかた"だろ!」
「細かい事は気にしないの!パッと見は一緒なんだから!」
「それはそうだけど....」
雅樹はそう言いながらパソコンに映し出された"中田ちさと"に見入っていた....
「どうしの?ボーっとして....」
「えっ?同じ名前でもこうも違うのかと....」
「ひっどぉい!」
私が不満そうに言うと
「ゴメンゴメン....いくら千聖が可愛くてもアイドルにはかなわないよな!」
雅樹の目はパソコンに釘付けだった....
「雅樹のバカ!!私帰る!」
私は雅樹の部屋の窓を出て屋根伝いに自分の部屋に戻った。私の部屋と雅樹の部屋は向かい合っていて、屋根と屋根の間も30センチ程しか開いてなかったので、小さい頃から屋根伝いに行き来していた。
「雅樹のバカ!!」
私はクッションを壁に投げつけた。
それから雅樹は私の事を千聖と呼んでくれなくなった....

小さい頃から雅樹は私の事を守っていてくれた....
私がまだ幼稚園児だった頃、家に帰る途中の道に大きな犬が寝そべっていた。近所で飼われている犬で、いつもは鎖に繋がれているのだが、その日は鎖が外れて道路にまで出てきていたのだった。きちんと躾されているので吠える事もしない犬だったが、そんな事を知らない私は自分より大きな犬が目の前にいるだけで怖くて動けなかった。
「ちぃちゃんどうしたの?」後ろから声をかけられた。私が振り返ると雅樹が立っていた。
「犬が.....」
私が目の前の犬を指差すと
「大丈夫だよ!」
雅樹はそう言って私と犬の間に立って手を広げて、
「大丈夫だからね!」
雅樹は私を背にして、犬を見ながらゆっくりと犬の横を通してくれた。
「まぁちゃんありがとう!怖くなかったの?」
私がそう言うと
「いつもお父さんに女の子は守ってあげないといけないと言われているから!」
雅樹は少し照れたように....少し誇らしそうに答えた。それから私達は手を繋いで帰った。
その日から雅樹は私のヒーローになった。


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