凌辱の時間-2
月曜の朝には、トオルに冷たい態度をされたことであんなに大騒ぎしていたのに、翌日、火曜の夜にはうれしくてたまらないといった声でみずきに電話をかけてきた。思い出すだけで頭が痛くなる。
『ねえ、聞いて!昨日の夜ね、トオルくんから電話があったの。今から会わないか、って言われて、それで・・・』
月曜の夜、トオルはマミをドライブに誘ったらしい。バイクでも皆でたまに走る峠道を走り抜け、夜景の綺麗な場所で車を止め、飲み会の席では疲れていて無愛想になってしまって悪かったと謝ってきたそうだ。悪気は無かったし、マミに嫌われたらどうしようかと心配になったとも。
「ふうん、それで?」
『わたし、すごくうれしくなっちゃって。でね、嫌うわけ無いじゃない、前からトオルくんのこと大好きだったよって言ったら、トオルくんもね、マミのこと好きだよって言ってくれたの!』
「でも、あの・・・エリナとキスしてたとか騒いでなかったっけ?あれはどうなったの?」
『そうそう、それも聞いたんだけど、マミの気のせいだって言われちゃった。暗かったし、ほんとに見間違いだったのかも。それでね、トオルくんったら我慢できないんだとか言って、車の中で・・・うふふ、恥ずかしいなぁ』
恥ずかしいと言いながら、マミはトオルとのセックスを赤裸々に語った。服を脱がされ、綺麗だよ、可愛いねと言われながら優しく愛撫されることがどんなに気持ち良かったか、想う相手と結ばれることがどんなに幸せだったのか。聞けば聞くほど、胸が押し潰されるように苦しくなった。
『ほら、わたし男のアレ舐めたりするの嫌いなんだけど、そういうのも全然させなかったし、すごく大切って感じで抱いてくれたんだぁ。また今度の土曜の夜に会う約束してるの。あはは、楽しみ!それでさあ、思ったんだけど、みずきもあんまり斎藤くんにしがみつくのは良くないんじゃないかなって。新しい恋したほうが、きっと幸せになれるよ』
「えっ、なによ、それ・・・このまえ言ってたことと違うじゃない」
『あのね、トオルくんとドライブした帰りに、みずきがあの女に復讐したいって思ってることとか、ちょっと話しちゃったんだよね。そしたら、トオルくんがそう言ってたの。いつまでも終わった恋にしがみつくなんてみずきのためにも良くないって』
「話したって・・・まさか、わたしと大塚のことも・・・?」
『ごめんごめん、うっかり口が滑ったっていうか、悪気は無かったんだってば。それに、トオルくんも絶対誰にもしゃべらないって言ってたもん』
「トオルくん、一樹くんと仲良いじゃない・・・か、一樹くんにこんなこと知られたら、わたし・・・」
『大丈夫だってば!トオルくん、マミとの約束だから絶対守るって。あ、そろそろ電話しなきゃ。トオルくんって意外と甘えんぼなんだよ、寝る前に電話でマミの声聞きたいって言うんだぁ。じゃあ、またね!』
いまにも踊りだしそうなほど弾んだ声。この数日、会社でも顔を合わせるたびに何度も聞かされ続けた。そのたびに頭の中でマミの顔が真っ黒に塗りつぶされていく。裏切り者。自分だけ幸せになんて絶対にさせない。