Jungle Jungle Moon-3
アマゾンのジャングルなら…他には猿か。
やっぱ人間に近い分だけ人間っぽいのかな?キスなんかもしちゃう?
ちょっと待て!アマゾンのジャングルの奥深くには、椰子の木なんか生えてるのかっ?!
もっとこう…なんてーか、椰子の木なんてワカリ易い木じゃ無くてサ、僕なんかの知らない木の上で極楽鳥が愛し合ってるイメージ。
いつのまにか…僕はシトラスの中に深く深く沈み込んだまま、薄暗いジャングルの中に居る。
僕たちの頭の上で極楽鳥が嬌声をあげながら睦み合ってる。
隣では、ライオンもキリンもゾウも、蛇も猿も…。
ああ、シトラス。
僕たちも愛し合おう。
快楽に身を預け、遠慮なんかしなくていい。
キリンが首を絡み合わせ、ゾウがその長い鼻を巻き付けながらキスをしてる。ねっとりと舌を絡めて。
ライオンの牡が、低く唸りをあげながら牝を力強く貫き通す。
さあ、シトラス…獣のポーズだ。
僕はシトラスの体を裏返すと、ヒクヒクと蠢きながら熱い蜜を湛える泉に僕自身を深く沈め込む。
「くっ…ぁふぅ…」
シトラスの口から吐き出されたのは、言葉では無く熱い吐息。
シトラス、シトラス…僕を感じている?
君の奥深くで息づく僕の想い。
君に届くように、もっと深く、もっと激しく…。
「…んっ…んっ…んっ…」
君の眉間に深く皺が刻み込まれて、顎が高く上がったら…それが君の合図。
僕以外の牡たちも、残った力の全てをもってパートナーの牝たちに情熱(パッション)の限りを注ぎ込む。
それは太古から綿々と続けられてきた儀式。
アフリカのサバンナで、アマゾンのジャングルで、そして…僕のこの部屋で。
「ぅっ…あああっ…くはっ!」
君の細い腰を両手で抱きしめて、僕の情熱の欠片が迸る。
君の真っ白な背中に点々と星を散らすように。
僕の頭の中で、ライオンが雄叫び、ゾウが高く鼻を天に向け“パオーッ”と鳴いた。
まだ熱く火照ったままの体を絡めたまま、僕たちは頬を寄せ合い唇を重ねる。
ほら、見てごらん。動物たちも皆、体を寄せているじゃないか。極楽鳥がくちばしをカチカチ言わせながらキスをして、二人揃って羽ばたいた。
天高く煌々と照らす月に向かって。
満月は優しくその柔らかな光を、地上に向けて降り注ぐ。
僕たちの睦事をたた黙って見下ろしたまま。
ねぇ、シトラス…このまま僕の傍に居たらどうだい?
どこにも行かないで。
こんなに幸せな部屋は、東京中探しても、世界中探しても他に有りはしない。
ほら、ジャングルになった僕の部屋の片隅で、蛇たちが密かに体を重ねたままだ。
“クスクス”
楽しそうな声を出して微笑むシトラス。
「ライオンの気持ちが少しわかったわ」
そうだろ?僕もだよ。
…暑っ…
容赦なく照りつける太陽に無理矢理起こされた僕は、腕を延ばしてシトラスを探る。
(?!)
シトラスっ?!
飛び起きた僕の横に、夕べは居たはずのシトラスの姿は無い。
…ああ…行ってしまったんだね…
開け放たれたままの窓からは、真夏の太陽が灼き吐くほどに注ぎ込む。
ゴロリと仰向けに寝ころんだ僕の頭の上で、陽の光を浴びて輝き始めたパームツリー。
はぁ…今ここにあるのは、ジャングルでは無くオアフの海岸。
……オアフ??…
やべえっ!!ノースショア!!!
慌てて鉢を引きずりながら、僕は外からは見えない部屋の隅にパームツリーを移動させる。
畳を薄く削った二本のラインが、夕べ確かにここに居たシトラスの存在を証明していた。
きっと僕は、あの口ひげを蓄えた万年日焼けのオーナーの元に、このパームツリーを返すコトはしないだろう。
次の満月まで、枯らすコトは決してしないから…シトラス、また僕の部屋に来ておくれ。
僕たちのジャングルに。