おにいちゃんの悪戯-1
高校に入って2回目の春が来た。
窓の外に見えるのは、満開の桜の木。樹齢何年だかしらないけれど、幹がどっしりと大きく太く、夜空に向かっていっぱいに伸ばした枝にはたくさんの薄桃色の花が今を盛りと咲き誇っている。
きれい。
昼間もきれいだけれど、今みたいに暗くなってからの夜桜も素敵。街灯の光に照らされて、暗闇に白く浮かび上がる桜の花。迫力がありすぎて、ちょっと怖いくらい。
ああ。いいな、桜は。だって、毎年こんなふうに誰もが見惚れるくらいに美しく咲けるんだもの。わたしも、あんなふうになりたい。きれいに、なりたい。
ため息をついてカーテンを閉めた。やだな。ほんと、やだ。机の上の手鏡を手にとって、そこに映る自分の顔を見て、さらにため息。やだ、やだ。
わたしには3つ年上のおにいちゃんがいて、勉強もスポーツもよく出来る。ママによく似て、鼻が高くて目元もキリッとしていて、お兄ちゃんの友達が言うには大学でも女の子にすごく人気があるみたい。なんだか、ずるい。
わたしなんて、鼻はぺちゃんこだし背は低いし、最近少しだけ胸は大きくなってきたけれど、顔もスタイルも普通かそれ以下だと思う。パパとママ、どっちに似てもこんなにパッとしない感じにはならないはずなのに。なんだかダメなところだけ遺伝してるみたい。例えばパパのちょっと優柔不断なところや、ママの忘れんぼうなところとか。
ふう。何度鏡を見ても、出てくるのはため息ばかり。
友達や家族は「そんなことないよ、いずみはかわいいよ」なんて言ってくれるけど、それならどうして高校2年生にもなって彼氏のひとりもできないのよ。ほんとに嫌になっちゃう。