おにいちゃんの悪戯-3
素肌に触れるシーツのひんやりした感覚が気持ちいい。手元のスイッチで電気を消して、頭から布団をかぶり、また自分のブスさ加減を嘆いていると、部屋のドアがコンコンとノックされた。
「いずみ?大丈夫か?」
おにいちゃんの声。もう、ほっといてよ。どうせわたしだけブスで、いつまでたっても彼氏できないんだから!心の中で悪態をついて、何度か続いたノックの音もおにいちゃんの声も無視する。
「返事しろよ。入るぞ」
ガチャリとドアノブが回される音がして、おにいちゃんが部屋に入ってきた。もう、こんなときには部屋のドアに鍵をつけてほしいって思う。パパの方針で、家の中のトイレとお風呂以外の部屋には鍵がついていない。ひきこもりになったら困るから、だって。わけわかんない。
「もう!勝手に入ってこないでよ、おにいちゃんの馬鹿!」
布団から顔だけ出してそう言うと、おにいちゃんは呆れたように笑った。真っ暗な部屋の中、カーテンの隙間から差し込む街灯の光が照らすのは、おにいちゃんの優しい笑顔。
「こんなに真っ暗にして、もう寝るつもりだったのか。まだ9時前だぞ?」
「ほっといてよっ!」
「親父が謝ってたよ。彼氏のこととか、無神経に言ってしまって悪かったって」
「べつに、パパが悪いわけじゃないもん・・・わたし、わたしがブスだから・・・」
また始まった、と軽くため息をついて、おにいちゃんはベッドの脇に腰を下ろした。ギシッとベッドのスプリングがきしむ。
「いずみは可愛いって、何回も言ってるのに・・・ずっと一緒にいる俺が言うんだから間違いないだろ」
「だって、高2にもなって彼氏もできないもん・・・おにいちゃんみたいにモテモテなひとには、わたしの気持ちなんてわからないよ!」