時の邂逅-1
(……ふむ……ここはどこだろう?)
男は目をしぱしぱさせて周りを見渡した。
どうやらどこかの……家……?と呼べるのかどうか……目の前にある天井はボロボロで所々穴が空いており、そこからキラキラと光が差し込んできている。
(え〜っと……確かゼビアに向かってる途中だったハズなんだが……)
なんでこんな所で寝ているのだろうか?……男はハッキリしない頭をフル回転させて記憶を辿った。
男の名前はデレクシス=J=カイザス、22歳。
南の大陸の一番北側にある国、カイザスの第3王子。
明るい茶髪に赤いメッシュ、水色の瞳……『軽薄王子』の異名を持っていた彼だが、最近いろいろあって一皮剥け、かなり内面的に成長した。
そこらへんの詳しい話は、本編ゼビア・ズ・ストーリーを読んで頂きたい。
そんなデレクシスは、知識や見解を広げる為にあちこちを旅する事を決意。
以前、知り合った冒険者バリーと共にゼビアに向かっていたのだ……が……何故こんな事に?
寝たまま腕を組んで頭を捻っていたデレクシスは、ガバッと体を起こした。
「ザック?!」
いつも傍に居る精霊ザックが居ない。
ザックは風の精霊で鷲の姿をしている。
オレンジをベースに羽と瞳はブルーで体がグリーン、頭のてっぺんにある長い飾り羽根は赤……と、かなり派手派手しい体色なのは個人の趣味、と言う事で突っ込まないでおく。
そのザックが近くに居ないのなんて契約してからは初めての事で、デレクシスはにわかに慌てた。
「……いや、待て……こんな時はまず落ち着く事が大事……っと……」
不測の事態が起きたら、まず落ち着いて状況を把握する事……バリーに教わった事を思い出したデレクシスは深呼吸する。
そして、ザックと意識を繋げばいい事に気づき、早速実行。
(ザック?)
精霊と契約するとお互いの意識を共有したり、使う魔法を強化できたりする。
誰でも出来るワケではなく、精霊の方が人間を選ぶ。
自分と合う魔力を持った人間の傍に居て、その魔力を吸い取り成長するのだ。
契約する事により、精霊も人間もレベルアップ出来るし、更に召喚師の魔力があれば格段に強力になる……が、それ以外に何が起こるかは分かっていない。
勢いで契約したデレクシスだったが、今はザックと運命を共にする覚悟が出来ているし、何が起きても後悔しない。
《クエッ》
喚びかけてみたら返事が返ってきたので、ひとまず安心。
デレクシスはザックの目を通して彼?の見ている風景を確認した。
誰かの肩に乗っているようで視界が上下に動く。
視線の先はボロボロの小屋……ザックを肩に乗せた人物がドアを開けた時、自分の姿が目に入った。
『ククゥッ』
「ザック!」
ザックが飛び上がったので意識を切って手を広げる。
胸に飛び込んできたザックを抱き締めたデレクシスはスリスリ頬擦り。
「良かった……何処かに行ってしまったかと思ったよ」
『ククッ』
デレクシスの言葉にザックはそんな事はしない、と首を横に振った。
契約したての頃は意思の疎通もままならなかったのが嘘のような仲良しぶりだ。