時の邂逅-8
『ホントに甘ちゃんだな……』
「ある意味取り柄だよ」
そう簡単に甘ちゃんなのは治らないから、良いふうに使う、とデレクシスは肩をすくめた。
小屋に着くとグロウは獣型になりサガンの元へ帰って行った。
ランプだけの灯りの中、デレクシスは沢山の情報を整理してみる。
何かがあって500年前に時間移動……ここでは召喚師も普通に居るし、精霊人が沢山居る……これはきっと、現代では分からない事を勉強して持ち帰れ、という神様のお告げ。
召喚師の事も精霊人の事もここなら調べ放題だ。
「こっちに居る間にもっと情報収集しなきゃな……なあ?ザック」
『ククゥッ』
帰ったらキアルリアや他の精霊人に教えてやれる。
でも……もし戻れなかったら?
そこまで考えたデレクシスはゾクッと体を震わせた。
全く知らない世界に投げ出された不安が今更になって襲ってくる。
両腕を擦ったデレクシスは心配そうなザックを見て微笑んだ。
「ザックが居てくれて良かったよ」
『クッ』
「1人だったら泣いていたかもしれない」
デレクシスはザックを抱いて、頬を寄せた。
その時、外から草を踏む音と柔らかい灯りが近づいて来るのに気づき、デレクシスはそっとドアを開く。
「あ」
「ウィル?どうしたの?」
来たのはウィル……彼女はランプと毛布を手に持っていた。
「毛布無かったな〜って思って……未来のお・う・じ・さ・ま」
ウィルは悪戯っぽく笑って、からかうように言う。
デレクシスが未来から来た事も、王子である事もサガンとグロウしか知らない……となると……。
「盗み聞きしたね?」
デレクシスはジトッとウィルを睨んだ。
デレクシスの視線にウィルは肩をすくめて小さくなる。
「ごめんなさい……だって、気になったんだもん……」
ウィルは上目遣いでデレクシスに謝った。
(……う……狡い……)
わざとらしくない自然な上目遣いはやはり可愛いと思ってしまう。
デレクシスはため息をつくと、少しドアを開いて中に入るように促した。
「怒ってる?」
「怒ってないよ」
デレクシスの答えにウィルはパアッと顔を輝かす。
コロコロ変わるウィルの表情にデレクシスはくすりと笑った。
ウィルはデレクシスの脇をすり抜けて小屋の中に入る。
持ってきた毛布を床に敷いてその上にちょこんと座ると、自分の横をポンポン叩いてデレクシスに座って、と合図した。