時の邂逅-22
「あれはっ?!」
空を飛ぶそれは巨大な怪鳥……真っ赤な羽からは火の粉が舞っている。
「南の召喚師の魔獣だ!!伏せろ!見つかるぞ!」
追っ手の1人が叫び、動けない仲間を引きずって木陰に隠れた。
しかし、動けない者は他にも居る……見つかるのは時間の問題だ。
デレクシスは立ち上がると、海とは反対側へと走り出す。
「デレク!?」
「私が引き付ける!今のうちに!!」
らしくないとは思うが、こうする以外に良い方法が思いつかなかったのだ。
追っ手だろうが何だろうが人が死ぬ姿は見たくない……何より、海へ逃げたウィル達には絶対に気づいて欲しくない。
(ザック!!)
デレクシスは走りながらザックに喚びかけた。
《クエッ》
一瞬だけ意識を繋げると猛スピードでこっちに向かって飛んでいるのが分かる。
(ウィルは?)
咄嗟に聞いてみたら、彼女達は海に面した洞窟に隠れた、とザックが伝えてきた。
こんな風にザックの心が分かったのは初めて……デレクシスはフッと笑う。
今なら、出来る。
「ザァック!!」
デレクシスは魔力を込めてザックを喚んだ。
森の中から光の粒が渦を巻いて凄い勢いで飛び出してくる。
その光はデレクシスを巻き込み、パァンと弾けた。
光の中から現れたのは完全共有したデレクシスとザックの姿。
デレクシスの背中には青い翼が生え、腕を緑色の羽毛が覆い、手は鉤爪のついた鳥の脚のようなものになっていた。
青く長い尾羽根と頭に生えた赤い飾り羽根……囮になって下さいと言わんばかりの派手派手しさだが……。
「今は好都合!ザック!行くよ!」
デレクシスは地面を強く蹴り、翼を羽ばたかせて空に上がる。
怪鳥がそれに気づいて首を巡らせた。
その怪鳥の金色の目を見た時、デレクシスの背中に寒気が走る。
感情がまるでない空虚な瞳……今までデレクシスが出会ってきた魔獣は、ザギを含めて皆、誇り高かった。
なのにどうだろう……望まない戦いに駆り出された召喚師の心なのか……魔獣が疲れきっているのかは分からないが、誇りも意思の欠片もない濁った金色の目。