時の邂逅-20
「サガン!グロウ!」
「デレクは水の奴らを海へ!頼んだぞ!」
後を追いかけようとしたデレクシスにサガンは命令する。
「っつ……分かった!」
唇を噛んだデレクシスは踵を返して他の精霊人の元へ戻った。
「デレク!サガン様は?!」
「サガンは大丈夫。水系は海に行けって。ザック」
デレクシスの声にザックが反応して巨大化した。
「乗って。海へ!」
水系の精霊人を背中に乗せたザックは大きく翼を広げる。
「先に行って!」
「デレク!?」
ウィルの叫びにデレクシスは軽く笑って彼女にキスをした。
「定員オーバーだよ。ザック頼む」
普段2人乗りのザックは既に5人乗せている。
デレクシスは残って追っ手を食い止めるしかない。
「いやっ!!デレク!」
地面を蹴って宙に浮いたザックからウィルがデレクシスを呼ぶ。
デレクシスはザックの上のウィルに微笑んで叫んだ。
「ウィル!愛してる!」
彼女に届いただろうか?……デレクシスは少し笑った後、表情を引き締めてサガンの後を追った。
デレクシスがサガン達に追いついた時、彼らは窮地に陥っていた。
獣型のグロウは沢山の矢や槍で串刺しになって地面に縫い付けられており、サガンには四方八方から縄がかけられている。
「捕まえたぞ!裏切り者め!」
(戦いを嫌って逃げただけで裏切り者扱いか……)
デレクシスは戦場という現実に歯を食いしばった。
「民の前に晒して処刑だ!」
逆らうとこうなるぞ、と脅しをかけるつもりらしい。
(させないっ)
サガンやグロウをそんな道具にさせやしない……デレクシスは一番近くに居る兵士らしき男の背後に回り、魔力を使って男の周りの空気を周りから遮断した。
簡単な魔法ならファンの宮廷魔導師ベルリアに教えてもらって習得済み。
空気を遮断する事によって音も遮断される。
男は急に何も聞こえなくなったのを不思議に思い、小指で耳をほじった。
その範囲を徐々に狭めていくと空気が薄くなるという事で……男は酸欠になり、がっくりと膝をつく。
そこを後ろから忍び寄り、首を腕で締め上げて気絶させる……という姑息な方法でデレクシスはじわじわと外側から人数を減らしていった。
追っ手は10人……それを相手に1人で勝てる自信がないのだから仕方がない。
姑息だろうが卑怯だろうが、このピンチを乗り越えるのが最優先だ。
コソコソと6人ぐらい減らした所で(結構頑張った)、追っ手の1人に気づかれた。