フランマ-1
僕は寝返りを打った。すると声がした。
「陛下、侍医が参りました」
僕はどうやらどこか異国の国王らしい。その主治医が来たということか。
医師らしい男が僕に頭を下げてから言った。
「陛下、お世継ぎが生まれない原因がわかりました。陛下の腎が弱っているために、子種が薄くなっているのでございます」
「どうすれば良いのじゃ」
「しばらくは女人断ちをして頂きます。また、空気の良い自然に恵まれた場所での心身共に療養し、滋養の有る物を食し、適度な運動をされることをお勧めします」
そういう訳で僕は山荘に行くことになった。そこにはフランマという下女が一人いるだけで、外に身の回りの世話をする者は一人もいない。
フランマも水を汲んだり洗濯をしたり、炊事や掃除薪割り、風呂焚きなどをするが、それ以外のことは一切関知しない。
僕の好みは腰の細い美少女タイプの女官だが、このフランマはわざと僕の好みとは違うタイプにしてある。ウエストは締まってはいるが腰が太い。大きなお尻の女は僕の好みではない。
また僕の好みは艶のある目である。伏目、流し目が似合うそんな可憐な目が好きなのだ。だが、このフランマの目は山猫のような目をしている。いつも野ネズミを狙うような目つきなので、僕を睨んでいるのかと思うほどである。どうも地の顔つきらしい。
警護の親衛隊は山荘を1km以上も遠巻きにしているが、その他の人間については、たまに大臣が政務報告に来るのと、侍医が診察に来る以外には誰も近づかない。
僕はどうやら世継ぎを生ませるために毎晩美女たちとセックスをし過ぎて体を弱くしたらしいが、その記憶は残っていない。
「陛下さま、洗濯するので、下着を出してくださいまし」
フランマが盥を持って来て、ぶっきら棒にそう言った。
僕が両手を広げて突っ立っていると、フランマは眉間に皺を寄せて首を振った。
「ご自分でお脱ぎくださいまし。その方が良い運動になります」
そして盥を置くと少し離れて背中を向けた。僕は下着を脱いで盥に入れると新しく用意されていた下着を自分で着替えた。フランマは盥を持って山荘を出て行った。
それからだいぶ経ってからフランマは布袋に何かを入れて戻って来た。調理場に行ったので、こっそり覗きに行くと、なんと布袋から蛇を3匹取り出して、それをナイフで捌いていた。
皮を剥いでぶつ切りにしてから鍋に入れて煮ているのだ。一緒に野菜を入れてスープにするらしい。
フランマの料理は基本的に肉と野菜のスープと小麦粉で作ったパンだ。パンは練って平たくして焼くだけで、肉は鶏を絞めたり、豚や羊を屠殺したてのものを使う。
だがたまに今回のように野生の生き物を捕まえて来て、その肉を使うこともある。
川魚・蛇・蛙・イモリ・野鳥のほか芋虫なども平気で使う。そして食べるときは給仕しながら、残さず食べるまで下げようとしない。
また普段の食卓のように余分に作って余すような量はないので、全部食べても腹八分目の量しか出さないのだ。だから好き嫌いを言っていれば飢え死にをしてしまうのだ。つまり食べざるをえない。これらの食事は全て侍医の指示によるものとのことだ。
このフランマは余計なことは言わないが、侍医の指示は忠実に守り必ずその通りに実行しようとする。まさに牡牛のように頑固である。
3日目のことだった。僕はやることがなくてフランマの水汲みを手伝った。フランマは水瓶がすぐに一杯になったので、顔を明るくして喜んだ。笑うと意外と可愛い顔だなとそのとき気づいた。
すると、胸やお尻の膨らみもそれほど悪くないなと思うようになった。