...意外と?-2
「とりあえず、部屋上げてくんない?」
ドアを大きく開き歩を進めようとする彼女に、片腕を壁につき制止した。
訝しげな表情を隠そうともしない元彼女。
(玄関にすら上げたくねぇ…)
もうすぐ郁が来る。
…いや、それがなくとも郁以外とヤるのなんて面倒だし、なんとなく郁が泣いてしまうような気がして嫌だ。
『悪いけど…これから人来るから。』
玄関のドアを三分の二ほど開けたまま、冷たく対応した。
「…いま居ないんならいいじゃん。」
口元を引きつらせながら粘る元彼女。
もううちに来た“用件”よりも、女のプライドの問題になってきているのが見てとれる。
(…めんどくせェ…)
粉を叩きつけ、毛穴ひとつわからない人形のような気もち悪さの肌。
下卑たまつ毛に、キツい香水。
以前から好みではなかったけど、こんなタイプの方が誘いやすくて気楽だった。
でもいまは不快で仕方がない。
『…聞こえてる?お前じゃ無理だっつってんだけど。』
「…な…っ!何その態度!?せっかくこっちが折れてやろうと思ったのに!」
そこからはもう、聞くに堪えない下品な用語満載の悪口雑言が飛びかう飛びかう。
実際俺のしていたことだから反論する気はないけど、奥で人の歩く音が聞こえるにも関わらず罵倒を止めない女に辟易する。
アパートの廊下だってわかってんのか?そんな風に思ってた時だった。