...意外と?-10
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「……夏目、さん…?」
まだ息も整っていないのに、心配そうに俺に手を差しのべる郁。
呼びかけられるまで全く気づかなかった。
少しだけ、涙で目が潤んでいる。
『ごめ…訳わかんないと思うけど、なんか感動して…』
順番が逆だけど…
好きな子とキスするのもセックスするのも、俺にははじめての経験だった。
いままで不要と思ってきたものが、こんなに胸をあったかくさせてくれるものだなんて…
(…にしたって、さっきからかっこ悪すぎだろ俺…)
恥ずかしさで郁に背中を向けると、うしろから細い腕が伸びた。
肩にもたれかかる郁の頬がじんわりあたたかい。
「…夏目さん、これから一緒に、いろんな“ハジメテ”しましょう。
一緒にどこかおでかけして、どこかでごはん食べて…あ!」
“これから夏ですよ!花火もいいですね!”そう言い腕にきゅっと力をこめてはしゃぐ郁を背中に感じて、からだの内側まであたたかくなった。
自然に笑みがもれる。
『じゃあ…』
振り返り、正面から郁をぎゅーっと力いっぱい抱きしめる。
鼻の頭に小さくキスをした。
『とりあえず、“一緒にお風呂”がいいかな?』
にやにやする俺の胸の中できゃんきゃん吠える郁を見てまた笑った。
うちの隣に住む女の子、郁。
彼女はひかえめで、たまにチワワみたいで…
世界でいっちばんかわいい俺の彼女だ。
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