焔の決断-9
「……そっかぁ〜王様って大変だねぇ〜」
そっとラインハルトの金髪の頭を撫でたエンに、ラインハルトは驚いて顔を向けた。
「……軽蔑されるか、罵倒されるか……最悪殴られるかと思ってた」
キャラに対して同情なら分かるが、自分に同情されるとは思って無かったのだ。
「あはは〜そんな事しないしぃ〜」
当事者でも無ければ、恋人でも無いエンにそんな事する資格は無い……どっちかと言うとそんな暴走をするしか無かったラインハルトの方が心配だ。
「ラインだけが悪いワケじゃないと思うしねぇ〜」
どうも王族と言うのは何もかもを背負い過ぎているのではないかと思う。
プライベートくらいは好きに生きていい。
エンの手にラインハルトは目を閉じて息を吐いた。
「……君は人の心を和ませるのが上手いね……」
いくら本人に許されようが罪は消えないし、自分が許せないのだが……誰かに『悪くない』と言われると少し楽になる。
「そうかなぁ〜?」
「そうだよ。だからあのアース殿が心を許しているし……キアルリアも君を受け入れたんだろうね」
「ありゃ、バレてたぁ?」
「バレてたねえ」
バレていたと言うかアースに聞いたのだが……クスクス笑うラインハルトを見たエンは、少し元気が出たみたいだと、頭を撫でていた手を離した。
「ラインの傍にもそういう甘えられる人が居ればいいねぇ〜」
そうすれば王様職も少しは楽になる、と言うエンにラインハルトは真面目な顔で言った。
「……エンがいいな」
「へ?」
驚いてラインハルトを見たオレンジの目を緑色の視線が捉える。
「ここに来たのはキアルリアに会いに来たんじゃなくて……君に会いに来たんだって言ったら……エンはどうする?」
エンはラインハルトの言葉を頭の中で何度も繰り返した。
その間、緑色とオレンジの視線は絡み合っている。
「なんてね」
「はぁ?」
ふっと表情を崩したラインハルトに、エンは間抜けな声を出した。
「嘘だよ。驚いた?」
喉を鳴らして笑ったラインハルトは視線を外して、寝ているアビィを抱き上げる。
「……タチ悪ぅ〜」
エンはラインハルトを睨んで頬を膨らました。
どう返事をしようか一生懸命考えて損した……まあ、答えは出なかったのだが……。